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神戸の独立系FPオフィス代表今村 浩二(上級ファイナンシャルプランナー CFP)

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「相続未経験」の女性必見!相続の「困ったこと」を銀行員が解説【前編】

編集スタッフ 社外アドバイザーの加藤隆二さん(銀行員)

「資産家の親が死ぬと、いつまでに銀行に伝えればいいの?」
「親には不動産投資の銀行借入があるけれど、自分にも関係があるの?」

素朴な疑問ですが、実際に自分の身に降りかかって初めてわかることばかりです。
そしてこれらは、銀行員として筆者の私が対処した現実問題でもあります。

そこで今回は、銀行員が見てきた相続の困りごとと、今からでも準備できる対策を解説します。
将来、あなたに降りかかるかも知れない、こうした相続の問題はいくつもあります。

しかもその中には、降りかかってきたときはすでに手遅れ、の場合すらあるのです。
そのときに慌てないように、ぜひこの記事を参考にしてください。

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相続の「困ったこと」  1.預金凍結

相続で起こる困ったことの一つ目は「預金凍結」です。
これは預金の多い少ないに関係なく、誰かが死亡したら必ずぶつかる問題です。

預金の凍結とは?

銀行や郵便局などの金融機関では、取引している個人が死亡したと連絡を受けると、
預金・ローンなど原則全ての取引を一時停止状態にします。

これが一般に「預金凍結」と呼ばれているものです。

本来の意味は、犯罪利用されている疑いのある口座の動きを止めるなどの措置です。
ただ、相続でも同じように預金を一時的に動かせなくするのです。

もちろん預金はなくなった本人名義で残っていますが、出し入れなど触ることができないので、
冷凍されるイメージで預金凍結と呼ばれます。

なぜ凍結されてしまうのか? そして預金凍結されるとどうなるのか?
次項から説明していきます。

預金が凍結されてしまう2つの理由 【1】相続手続きのため

預金が凍結されてしまう理由は2つあります。
一つは相続の手続きをするため、そしてもう一つは相続トラブル防止のためです。

一つ目の理由は、預金の相続手続き上必要だから、という事務的な理由です。
死亡した人の取引は、相続手続きをしない限り入出金や解約ができないと説明しました。

この、預金の相続手続きには「遺産分割協議書」や「遺言書」といった書類が
必要になりますが、こうした書類には必ず預金や借入金の残高が記載されています。

そして、遺産分割協議書などに記載する預金残高は、本人が死亡した日とするのが一般的です。
しかしながら、たとえば相続手続きをするまでのあいだで定期預金に利息がついて
預金残高が
増えると、遺産分割協議書の残高と変わってしまうことになります。

これはローンなど借入金(負債)についても同様で、本人が死亡した時点で借入残高を
固定させるために、毎月返済もストップしてしまうのが一般的なのです。

ちなみに借入金の場合は、相続手続きのために返済をストップするわけであり、
いわゆる延滞にはなりません。
また銀行によっては、遺族から依頼があれば、便宜的に今まで通りの返済を続けられる場合もあります。

いずれにせよ、遺産分割協議書などで財産、負債の数字を決めた後で残高が変動すると
手続きがより難しくなるので「死んだらストップ」というのが基本的な考えなのです。

預金が凍結されてしまう理由 【2】相続トラブルを防ぐため

二つ目の理由は、相続トラブルを防ぐため、もっと言えば
「相続トラブルに銀行が巻き込まれないようにする」というものです。

そもそも相続の手続きを踏まないと、解約などができないのはなぜでしょうか?
それは相続人全員の権利を守るためで、そのために手続きには相続人全員の同意が必要だからです。
たとえば相続人が複数いる場合、そのうちの一人だけに手続きさせてしまうと、
他の相続人の権利を守れない恐れがあります。

そのため銀行は、特定の相続人だけが預金を独り占めしたり、他の相続人に黙って解約したりするのを防ぐために、
相続人全員の同意を確認しない限り相続手続きには応じないというのが基本的な姿勢なのです。
ちなみに預金の相続手続き書類は、原則として相続人全員が自署・捺印をする、
つまり相続人全員の同意を確認する形式になっています。

またそうした申込書類には「後日トラブルがあっても、銀行には文句を言わず親族間で解決する」
といった記載があります。

相続のことを「争族」と表現することもあるくらい、相続でトラブルになるのはよくあることで、
こうした書類の内容を見ても、銀行が相続トラブルに巻き込まれたくないという意図が感じられます。
ただし、銀行の相続手続きは面倒だといった批判も多く、銀行界全体では手続きを簡素化する方向に進んでいます。
(*具体的な手続きは銀行により違いますので、かならずご自身で確認してください)

銀行員が対応した実例1「あるはずの預金がない!」

これは資産家の父が死亡して妻と子(兄弟2人)で相続することになった、その次男から相談を受けたケースです。

就職して自分の家庭を持つAさん(40代男性)の、実家に暮らす父親が死亡しました。
葬儀を済ませ元の生活に戻っていましたが、数か月して兄から「相続手続きをするので来て欲しい」と連絡があり
帰省したそうです。
兄は長男として、結婚後も実家で父と暮らしていたのですが、遺産分割協議書を見た
Aさんは直感的に「預金の中身がおかしい」と感じたそうです。

まず跡取りであり、これまで父の面倒も見てくれたので、実家の土地など財産を兄が自分より多く引き継ぐことには、
Aさんも不満はありませんでした。

しかし父が生前「長男ばかりでは不公平だから、〇〇銀行の1千万円はおまえに残す」といってくれていた預金が
無くなっていたのです。

そのことを伝えると兄は「俺は知らない」というばかりで、態度が怪しかったそうです。
最終的な話し合いの末、父が言っていたのとは違う1千万円をもらえたので、
結局この問題は、真偽がハッキリせずうやむやに終わりました。

「相続争いは身内の恥だから、事を荒立てても仕方がない」とAさんは我慢したという結末です。

ただしここで例にした「行方不明の1千万円」は、仮に相続で預金凍結されたあとに長男が悪意を持って
解約していたなら問題となります。

他の家族から異議を唱えられれば銀行が調査して、兄に悪意があり銀行にも過失があったなら銀行の対応も問われます。
最悪の展開で裁判に発展して銀行が訴えられたり、詐欺などの犯罪になったりした場合は銀行の信用も失墜しかねません。

こうした点からも、原則として預金凍結されると相続人1人だけで解約は不可能ということは覚えておいてください。

預金が凍結されるとどうなるの?

では、預金が凍結されると具体的に何が起こるのでしょうか?
ここまでの内容も含めて説明します。

<預金が凍結されるとどうなるの?>
●入金も出金もできなくなる:死亡している人の口座には、原則として入金や出金ができなくなります。
相続の手続きまで故人の資産を増減させないという意図があります。(上述)
また、そもそも預金口座は名義人その人のものなので、名義人が生きていないのにお金が入ってきたり、
逆にお金が出ていったりすること自体が不自然だという考えに基づくものでもあります。

●公共料金など自動引き落としができなくなる
これも入出金と同様で、死亡した人から各種代金をもらうことはできないという理屈です。
相続手続きが終わるまでは、振込や払込用紙で支払うのが一般的です。

●給与や貸家の家賃、商売の売上など振込で受け取ることはできない
死亡した人が受け取る予定の給料や家賃、商売の売上なども財産になります。
したがって預金凍結されたあとは、今までのように故人の口座で受け取れません。
仮に振り込まれたとしても入金されず、銀行から連絡があり手続きをしなければいけません。
具体的には、便宜的に妻や子供の口座で受け取ったり、専用の口座を別に作って管理したりなどの
方法を取ることになります。

●借入れの返済も本人名義口座ではできなくなる
これも預金や公共料金などと同じく、死亡した人が借金を返すのは不自然という論法です。
借入の返済自体がストップされ、相続手続きで預金と同時に新しい人が引き継ぐのが一般的です。
ただし借入の場合、相続で凍結されていても利息は引き続き発生します。
相続手続きが長引けば利息もかさんでしまうため、銀行によっては遺族からの申し出に応じて、
借入の返済だけは継続する場合もあります。

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神戸の独立系FPオフィス代表
今村 浩二が監修しています。
上級ファイナンシャルプランナー(CFP)・独立系ファイナンシャルプランナー(IFA)として
神戸・大阪・姫路でマネーセミナーや個別相談を実施。