
神戸の独立系FPオフィス代表今村 浩二(上級ファイナンシャルプランナー CFP)
資産運用「FPに相談するメリット、銀行に相談するメリット(銀行編)」
世界情勢が目まぐるしく動き、為替相場が一時的に急速に円安に向いたり
日銀の金融緩和政策が転換したりと、運用や投資で不安を抱えたり、
あるいは次を見据えた動きを考えたりする人もいると思います。
執筆者の私は勤続30年の銀行員として現在と同じ、あるいはもっと大変だった
「バブル期の熱狂とバブル崩壊」
「失われた10年」
「リーマンショック」
といったできごとを、お金のそばで経験してきました。
まあ、我ながらよく銀行員を続けてこられたなあと感心しますが(笑)、
その秘訣は銀行員として、銀行員ができる提案をしてきたからだと思います。
そして、それと同時に感じるのは銀行員と独立系FPとの違いです。
それは資産運用提案で「FPにできること、銀行員にできること」は違いがある
からです。
もちろんFPが上だとか、銀行員の方がすばらしいとか優劣はありません。
それぞれに特徴や相談するメリットがあり、それを有効活用することが大事だと考えています。
そこで今回は、2回にわたり独立系FPと銀行の運用アドバイスの違いを説明したいと思います。
前編は「銀行で相談するメリット」についてお話します。
投資や運用は自分の力だけでは限界を感じるときもあり、やはり頼れるプロが必要です。
この記事がその参考になれば幸いです。
このページの目次
銀行が金融商品を販売する理由
そもそもなぜ銀行で投資信託などの金融商品を販売するようになったのでしょうか?
FPと銀行の違いを知るうえで、少し触れてみたいと思います。
本来の銀行というものは、顧客から預金としてお金を預かり、そのお金を融資して利息をもらい
預金者にも利息を付けて満期で返すのが、基本業務です。
これを「金融仲介機能」と呼びます。
この金融仲介機能において、預金と融資の利息の差額が「利鞘(りざや)」です。
もともと銀行は利鞘で利益を得てきたのですが、金融の自由化や不況による低金利の影響で、
利鞘だけでは銀行が儲からなくなったので、手数料で利益を得ようと投資商品の販売をするようになったのです。
銀行にとっての儲かる商品
金融商品を扱っている販売会社は、自社の個人年金(販売は生命保険会社など)や
投資信託(こちらは証券会社、投信会社など)を、銀行が販売してくれることに
対して手数料を払います。
つまり銀行は保険会社や投信会社の下請けなのです。
では、銀行において金融商品販売の儲けはどのくらいになるのでしょうか?
こちらはりそな銀行の例ですが、年間で1,874億円(*)という大きな額で、
銀行の収益の柱になっていることがわかります。
(*役務取引等利益:銀行がサービスの対価として得る手数料で、ATM手数料から投資信託や
個人年金保険の販売手数料など)
りそなホールディングス/決算短信 2022年3月期
https://www.resona-gr.co.jp/holdings/investors/ir/kessan_c/2022.html
銀行の金融商品勧誘~ノルマとお客様本位の間で~
銀行員にはノルマがあります。
今さらあらためて書くことでもありませんが、今回の記事では重要な点なのです。
例えば、銀行員一人に対し「半期6ヵ月で手数料を1,000万円獲得せよ」という
ノルマが課されます。
ここで「手数料」というキーワードが出てきましたが、これは表現の問題です。
というのも、過度のノルマが問題となっている金融業界では、あからさまに金融商品を限定して
職員へ販売ノルマを課す(例:個人年金を1億円販売する)ことは避けているので、
このような表現をしているわけです。
手数料なら種類は問わないわけですが「目標を達成するために、少しでも手数料が高い商品を売らなければ」
といった方向に意識が向いてしまうことは否めません。
このような背景から、銀行の金融商品販売のトラブルも多くなっているという現実もあります。
そのいっぽうで、銀行など金融機関では「顧客本位の業務運営」をホームページでアピールしています。
これも裏を返せば「今までは金融商品販売などお客様本位ではなかったので、これからやります」
と言っているようなもので、銀行員としては忸怩たる思いです。
銀行では投資信託の他、保険を買うこともできます。一部、元本保証のない投資性の商品もございますので、
銀行で扱っているからといってすべてが「元本が減らない安全な商品」ではありません。
ご利用の際は、しっかりと商品説明を受けて判断して下さい。
金融広報中央委員会/暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト
知るぽると/わたしを守る「生命保険」/(5) 生命保険をどこで買うか/どこで買うか③銀行https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/seiho/seiho2_05.html
MUFG/お客さま本位の業務運営(三菱UFJ銀行の取組内容)https://www.bk.mufg.jp/kigyou/policy/business_operation.html
資産運用を銀行に相談するメリット
私は銀行員として、それでも銀行に資産運用を相談するメリットはあると考えています。
ここまで銀行の問題点を強調してきましたが、それは銀行の置かれている立ち位置を知ったうえで、
銀行に資産運用を相談するメリットを考えてほしかったからです。
では、具体的なメリットを紹介していきます。
銀行に相談するメリット1. システムを駆使したアドバイスがもらえる
資産状況や家族構成などを総合的に判断してアドバイスしてもらえる点が1つ目のメリットと言えます。
銀行と取引を続けていくと、資産状況や家族構成からその人と家族全体の様々な情報が
銀行に蓄積されていきます。
また銀行では独自のライフプランニング提案用ソフト、シミュレーションなど高度な分析ツールを持っており、
そうしたツールも活用して多角的なアドバイスが可能なのです。
銀行に相談するメリット2. 資産運用以外も同時に相談できる
また資産運用ばかりでなく、自動車の購入や自宅新築などお金を借りる場面も、
銀行なら同時に相談できるのが2つ目のメリットです。
資産運用の相談中に「住宅ローンのことも聞きたいんだけど」と依頼があれば、
ローンの担当者が説明してくれるといったように、ここは銀行ならではの利点と言えます。
銀行に相談するメリット3. ワンストップで便利
そして相談から申し込み、契約までワンストップで便利なのが3つ目のメリットです。
銀行で資産運用の相談をした場合、提案や商品が気に入れば、そのまま申し込みをして契約まで、
すべて銀行で済ませることができます。
銀行なので運用資金の出金から送金も可能なわけで、このように一度相談窓口に座れば、
最初から最後までワンストップで便利なのです。
あわせて読みたい!おすすめ記事
関連記事

マネレピのコラムはすべて
神戸の独立系FPオフィス代表今村 浩二が監修しています。
上級ファイナンシャルプランナー(CFP)・独立系ファイナンシャルプランナー(IFA)として
神戸・大阪・姫路でマネーセミナーや個別相談を実施。