今だから考える金利と資産運用について〜これまでの流れは銀行員が解説しますので、これからを一緒に考えましょう
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「金利のある世界が近づいている」銀行員の私もそう感じています。
2022年の年末、前日銀総裁発言に端を発し、金融緩和政策が転換期を迎えるのでは?との空気が流れ一部金利、たとえば住宅ローンでは10年固定金利の店頭基準金利(*)が上昇し、預金でも2023年11月より10年定期預金の金利を一部メガバンクが大幅に引き上げました。そして日銀総裁が交代し、2024年3月にいわゆる「ゼロ金利政策の解除」が発表されてから現在(記事執筆時点・2024年6月)に至るまで「金利」が注目を浴び続けています。
いま、何が起きようとしているのか?それとも、もうすでに始まっているのか?
今回はこの点について、今だからこそ考える金利と資産運用について、これまでの過去を振り返りながら考えてみたいと思います。
これまでの流れは「バブル入社の銀行員」である筆者の私が担当します。そして、これからは一緒に考えていきましょう。
このページの目次
お金に関する「これまで」〜バブル期から現在までサラッと解説
私が銀行に入社したのはバブル期(*1988年頃~1991年2月・諸説あり【参考①】)も終わりかけの頃で、「倍返しだ!」で注目された銀行員ドラマの主人公と同期です。
不幸にも(いえ、バブルの恩恵も少しは享受できたかも知れないので、不幸と言ってはいけないかも?)入社のタイミングが合ったのでバブル絶頂期からバブル崩壊と、そこから2020年代初頭までのいわゆる「失われた30年」(そうなると私の銀行員生活も「失われ続け」だったことになりますね)を過ごし、我ながらよく銀行員を続けて来たものだと、感じています。
昭和おじさんの話はこれくらいにして、まず日本経済や株価、金利など各種の数値がバブル期から現在まで、どのような動きをしてきたか?を当時のトピックスなどと重ねながら振り返ってみましょう。
【参考①】日本銀行金融広報中央委員会/暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト 知るぽると/バブル経済とは
マネー関連指標の変遷・年表形式
バブル期から現在(2024年6月・記事執筆時点)までの動きを、年表形式にまとめてみました。(※画像はクリックで拡大します)
≪説明≫
● 1989〜1990年初頭がバブル絶頂と言われている
● 例:日経平均の最高値:1989年12月29日・38,915円87銭
● ピーク直後から景気は下落、金利など各指標も軒並み下がり始める「バブル崩壊」はこの頃と言われている
● 景気後退、各指標低下に歯止めがかからず
【参考】
・日経平均株価:日本経済新聞/日経平均株価/ヒストリカルデータ
・為替・円/USドル相場:日本銀行/主要時系列統計データ表/為替相場(東京インターバンク相場)
・預金金利:杉並区/定期預金の推移(過去30年)
・金価格:田中貴金属工業㈱/金価格推移/年次推移
・住宅ローン金利:金利について/一般財団法人住宅金融普及協会
・事件出来事:年表で見る20世紀の歴史
あのときどうなった?〜投資・運用の動向
年表をまとめながら、かなり激動の時期を銀行員として過ごしてきたんだなあと、今更ながら感じてしまいました。そこで、世界的な事件など大きな変化があったとき、投資や運用はどうなったのか?を少しだけ紹介します。
(*ここからの内容は、筆者が銀行員として経験したことと、それに関する個人的な見解です。特定の金融商品を否定したり、逆に特定の投資・運用に誘導したり、といった意図はありません)
バブル崩壊の前後からずーっと積立投資していた社長さん
バブル期より前の1980年代後半から、毎月積み立てで投資信託を続けていた社長さんがいらっしゃいました。商品内容はもちろん理解されていましたが、投資や運用というより銀行とのお付き合いで毎月1万円ずつ積み立てていたそうです。私がお会いしたのは21世紀になったばかりの2001年で、バブル崩壊から10年後くらいの時期でした。そろそろお子さんに経営を任せたいと、ご自身の取引を整理しようと、この長期間に積み立てた投資信託を解約したところ、トータルで毎月積み立てたお金が約2.5倍に増えていました。社長さんの投資信託は、毎月1万円の積立金額で日経平均株価への連動を目指すタイプのもの(詳細後述)でした。私は社長さんの運用結果を見て「ドル・コスト平均法って、本当だったんだ!」と実感したことを覚えています。
ドル・コスト平均法とは、一度に数百万円などまとめて投資するのではなく、毎月1万円などといったように、少額かつ定額で投資を続けていく手法です。金融商品の値動きに応じ、高い時は少なく、低い(安い)時には多く購入できるので、結果的に購入単位が平準化するもので、「時間(時期)の分散」とも呼ばれる投資手法としてよく知られた考え方です。【参考②】
どちらかと言えばお付き合いの意味合いが強かった運用ですが、結果的に長期で、そして「ドル・コスト平均法」という代表的な投資方法で運用できたので、増えて戻ってきたというお話です。社長さん「銀行とのお付き合いでも、こちらが得することもあるんだね」と感謝(皮肉?)の言葉が印象的でした。
「時間(時期)の分散」(ドル・コスト平均法)の例
次に、毎月1万円ずつ、1年間の間、ある投資信託を購入し続ける場合を考えてみましょう。購入する投資信託は、以下のグラフのような値動きをしたものとします。最初に投資信託を購入した1月時点の単価が1口10円だった場合、10,000円で1,000口購入できることになります。他方で、最も値が下がって1口2円になった9月時点では、同じ1万円で5,000口購入できることになります。
1年間経った時点での投資総額は、1万円/月×12ヶ月ですので、120,000円、購入した投資信託の総口数は27,123口になっています。
- ○12月末時点の投資信託の価額:5円/口×27,123口(総投資口数)=135,615円
- ○12月末時点の投資総額:10,000円/月×12ヶ月=120,000円
- ○損益:135,615円-120,000円=15,615円(利益)
仮に12月の時点で投資を止めた場合、12月時点での1口当たりの価額は5円ですので、この時点で保有している投資信託の価額は、5円/口×27,123口で135,615円になり、投資総額の120,000円と比較すると、15,615円(135,615円-120,000円)の利益が出ていることが分かります。
「時間(時期)の分散」(ドル・コスト平均法)の例
上のグラフを見ると、最初に投資信託を購入し始めたときよりも、投資を止めたときの方が、1口当たりの価額は下がっていますが、計算してみると、結果的には利益が出ていたということになります。これは、投資の時間(時期)を分散したことで、1口当たりの投資価額が平準化され、高い値段の時に投資した分の値下がりが、低い値段のときに投資した分の値上がり分でカバーされた結果ということができます。
【参考②】金融庁/投資の基本
世界の激動を乗り越えた外貨預金
バブル崩壊からしばらくのあいだ、日本国内での投資より世界に目を向け、外貨預金が注目された時期がありました。こちらはバブル崩壊後の1993年頃、USドルの外貨預金を1千万円単位で始めた女性のお話です。
外貨預金の場合、預け入れた外貨(ここではUSドル)ベースでは元本と利息は約束されています。(例 USドル建て・1年満期・年利5%で1万ドルを預けたなら、1年後の満期時には元本1万ドルに税引前500ドルの利息が増える)ただし問題は、日本円に換金(円に戻す)するときが、預け入れたときより円高になっていると、元本を下回る(「為替差損」逆に増える場合は「為替差益」)可能性があるということです。【参考③】
この女性も、預け入れしたときから円高に触れてしまい、なかなか解約するタイミングがなかったそうです。しかし辛抱強く相場の上昇を待ち続け、1999年にほぼ元本を取り戻せる相場になったタイミングで日本円に戻し、トータルはプラスマイナスゼロといった結果でした。
この間、国内では自民党が下野し政権交代が起こり、阪神淡路大震災などの激動もありました。そしてユーロが誕生し、日本がサッカーワールドカップに初出場できた1999年に投資元本が回復と、世界の激動を乗り越えた外貨預金でした。
この女性も「(為替相場の回復を)待っているあいだは、大事なお金をアメリカに旅立たせたつもりで、いつか帰ってくると信じていたけど、無事に帰ってきてくれました」「儲からなくても、授業料無料で投資の勉強をさせてもらったと考えることにします」と仰っていました。
なおその後はドル/円相場は円高に進みますので、結果論ではありますが、いいタイミングだったと言えます。
【参考③】日本銀行金融広報中央委員会/暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト 知るぽると/外貨預金とは
バブル期から現在までを振り返って見えること
バブル絶頂期から崩壊、そして同時多発テロやリーマンショックなど世界的な大変動や、ゼロ金利解除などのトピックスと、為替相場や金利などの指標はどのように動いてきたのでしょうか?
私は経済学者ではありませんし、銀行員とは言え何かを語れるような知識もありません。しかしこれまでを振り返って見えるのは「将来何が起こるか?など誰にもわからない。また金利や為替相場がどう動いていくか?などは正確に予測できるものではない」という事実です。
いきなり突き放すようですが、これはある意味真実なのです。
たとえば「リーマンショックから円高が進んでいたときに、USドル建て金融商品に投資して現在まで持ち続けていれば・・・」これは今だから考えられることで、その当時に、現在の円安水準を予想することなど不可能なのです。
これは、ネット記事などにある以下のような記載も同じです。
「10年前に▲▲の株を買っていた人は、現在では価値がどれだけ増えているか?」
「年2%で10年間運用した場合、元本は何倍になるか?」
「住宅ローン金利が今より2%上昇した場合、毎月返済額はどれくらい多くなる?」
これらはすべて「タラレバ」「杞憂」であって、ある意味「考えてもしょうがない」ことなのです。(ただ、あくまで個人的な意見ですが、やはり「金」は長期的にも値上がりを続けてきましたし、つい最近の2024年4月にはついに1グラム1万円を突破するなど、文字通り「有事の金」なので、買っておけばよかったと思います)
しかし上記したように、これからどうなるか分からないこそ、投資・運用をどうすべきか?を考えるヒントはあります。
お金に関する「これからどうする?」
ではこれからどうするか?過去を振り返ったところで、まず銀行員としての意見を述べます。
なお私は現役銀行員で、日頃お客様とお金に関する色々なお話をして、また金融商品の勧誘もしています。しかしこの記事は読者の方に役立つ情報を提供したい、という気持ちだけなので、あくまで「商売抜き」でお話しています。
これからどうする?〜銀行員はこう考えます
私は、まず自分のお金を「色分けする」ことを考えるべきだと考えます。色分けとは、お金を「使うお金」「残すお金」「働いてもらうお金」などに分けることです。もちろん預貯金などをきっちり区分けするのもわかりやすくて良いと思いますが、そこまででなくてもイメージとして、自分のお金を色分けするだけでも投資・運用の第一歩と言えるのではないでしょうか?
お金を仕分けする〜それだけでも「ポートフォリオ」です
もちろん色分けと言っても、これは私が考えている呼び名で、人それぞれ自由に分類していいと思います。
まず私の場合は、お客様と話をするときも、こんな感じでお話しています。
<お金を色分け(銀行員が現場でお話している感じで)>
- 【使うお金】
生活費や支払いなど日常のお金であり、支出だけでなく給料などの収入も含む 使うお金は増えたり減ったり、余裕が生じれば他のお金に振り分け、足りないときは他から補充するもので、これは投資や運用に回すべきではありません - 【残すお金】
なにかのときのために持っていたいお金や、教育資金から結婚資金まで子供のためのお金、あるいは自分たちの老後に必要な蓄えなど すぐに使わないで残したいお金なので、時間的な猶予があるので増やすことにも振り分けは可能ですが、残すという「使命」を忘れないことも大事です - 【働いてもらうお金】
上記の使うお金、残すお金以外のお金で、リスクを負う可能性があっても、増える可能性も追求したいお金 ただ置いておくのではなく、増えるように「働いてもらうお金」として、投資や運用に振り分けも可能なお金という意味です。
これは私流の考えで、仕分ける数はもっと細かくてもいいですし、どういった分類にするかなども、自分で好きに考えれば良いのです。とはいえ、たとえば私流の分類で自分のお金をざっくり分けて考えたなら、もうそれは立派なポートフォリオと言えます。
そして「使わないお金を分けたなら、こんな商品がありますよ・・・」と銀行員はセールストークを始めるのですが、ここまでの考え方だけ参考にしてください。
タイプ別に運用を考える
お金に関する過去のトピックスや、銀行員の考えなどを読み進めてもらいましたので、ここからはそれぞれの性格などタイプ別に運用を考えてみましょう。ここからお話するのは、私が銀行員としてお金とお客様に長く接してきた経験から感じていることで、もちろん運用スタイル、投資方針などは他人に決められるものではありません。でも星占いで「今日のラッキーカラーは赤」などのアドバイスを取り入れて見るように、まずは軽い気持ちで参考にするだけでもOKです。
わかりやすい商品で投資を始めたい
投資の初心者なので、自分のお金が何を基準に、何に影響され増減するのか?といったように、仕組みと成果がわかりやすい商品で投資したい人にはインデックス運用が合っていると考えます。
インデックスとは、特定の市場・マーケットの指標のことで、株価指数や債券指数などがあります。たとえば株価指数なら「TOPIX(東証株価指数)」や、代表的な225銘柄で算出する「日経平均株価」、アメリカなら「S&P500」などの指数が有名です。そしてインデックス運用とは、上記したような指標を基準とし(基準指標を「ベンチマーク」と呼ぶ)として、そのベンチマークに連動した運用を目指すのがインデックス運用の考え方です。
たとえば日経平均株価をベンチマークにしたインデックス運用の投資信託を購入したなら、運用成果は日経平均株価の推移を見ればある程度のイメージを掴むことができます。もちろん運用をめざすということで、必ず連動した運用成果が保証されているわけではありませんが、運用成果を考えるヒントにはなります。
運用成果に期待したいけれど、リスクはなるべく抑えたい
老後も見据えて運用成果に期待したいけれど、できるだけリスクは抑えた投資がしたい人にはバランス型運用がおすすめできます。
バランス型運用とは、値動きの異なる性質を持つ投資対象に分散して投資することで、投資のパフォーマンス安定を目指す考え方です。たとえばよく用いられる例としては、債権と株式にそれぞれ投資したり、日本円建てと外貨建てに分けて投資したりする「分散方式」があり、実際は更に数多く緻密に組み合わせることで、安定と成果をともに目指していくのが基本的なイメージです。
リスクを取ってでも、高いリターンを追求したい
高い運用パフォーマンスを追求したいので、リスクを取るのもOKな人なら、積極運用タイプの商品を考えてみてはいかがでしょうか?
積極運用とは、金融商品の運用会社などがそれぞれに保有する情報や投資理論、ノウハウなどを駆使して、積極的に運用成果を追求する考え方で「アクティブ運用」とも呼ばれます。具体的には株式や公社債など投資対象への配分(これを「アセット・アロケーション」と呼びます)をこまめに組み替えたり、投資銘柄を変更したりなどで運用成果の向上を図る手法です。
まとめ
今回は過去を振り返り、世界的な激動があったときに投資・運用がどうなったか?を見ながら、お金についていろいろと考えてきました。
ここでお話しているのは、私が銀行員として過ごしたバブル崩壊後の「失われた30年」から現在に続くまでのお話しですが、そうした過去から見えてくるヒントを、ご自身の資産形成に役立てていただければ幸いです。