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銀行の預金金利キャンペーンで得するのは預金者か銀行か?〜銀行員が金利キャンペーンを資産形成に活かす方法を教えます

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日銀の政策転換からゼロ金利政策が解除されてしばらくたちました。

最近の話題は何と言っても「金利」です。特に住宅ローンを変動金利で借りている人にとって、金利の上昇は返済が増えることにつながり、まさに「人ごとじゃない」と心配する人が増えています。ネット記事でも就寝を占めるのはローン金利についてです。

では運用や資産形成に金利は関係ないのでしょうか?いえ、決してそんな事はありません。なぜなら資産形成を考えるとき、金利は重要な要素になるからです。それに最近は「預金キャンペーン」などと言ったキーワードや、高金利を全面に出す銀行の広告も目につくようになりました。

そこで今回は、預金銀行の預金金利キャンペーンについて解説しながら、それを資産形成に活かす方法についても銀行員が解説します。ゼロ金利解除により近づきつつある(はずの)「金利のある世界」を見据えて、ご自身の資産形成の参考にしてください。

銀行はなぜ預金金利キャンペーンをするのか?

「銀行が預金キャンペーンをするのは預金が欲しいからでしょ?」

こう感じた人も多いと思います。確かにそれも事実です。たとえば私が銀行に入社したバブル期には、とにかく銀行員は預金を集めることが仕事でした。そのために、各銀行で金利競争をして、少しでも高い金利で他の銀行から預金を持ってきてもらうのが、銀行員の使命だったのです。

でも、現在はバブル期と違い、正直に申し上げれば「それほど預金は欲しくない」というのが銀行の本音なのです。それはなぜか?ここを知れば、なぜ銀行が預金金利キャンペーンをするのか?「銀行の狙い」が見えてきます。

銀行には預金が必要?いらない?

「それほど預金は欲しくない」と書きましたが、銀行ではまったく預金が不要なわけではありません。それは「金融仲介機能」を果たすために預金が必要だからです。

金融仲介機能とは、預金として預かった資金を、企業の事業資金や住宅ローンなどで融資をして、借入利息をプラスして資金を返してもらい、預金が満期になったなら、金利を増やして顧客に返すという、銀行として当たり前であるお金の流れのことで、これを「金融仲介機能」と呼んでいます。

このように、銀行や信用金庫などは預金を集めて融資する金融仲介機能があるからこそ「金融機関」と名乗っているとも言えます。ちなみに消費者金融やクレジットカード会社などは、預金を集めなくても融資をしますが、こちらは金融仲介機能を持たない=金融機関(BANK)では無いという意味で「ノンバンク」と呼ばれるのです。

(ちなみに「定期預金とは?」といったコラムがメガバンクの公式ホームページで同時に並んでいるのも、みなさんが預金から離れていることを表しているとともに、銀行が預金を必要としている一つの証拠と言えるでしょう)

【参考】
りそな銀行公式ホームページ/定期預金のメリットとは?デメリットや資産管理方法も併せて解説!
三菱UFJ銀行公式ホームページ/定期預金とは?メリットや種類を理解して始めてみよう!
三井住友銀行公式ホームページ/定期預金・積立預金 大切に育てたい将来のお金。あなたの目的に合うプランをお選びください。

【結論】キャンペーンは銀行が「儲けになる種」を集める手段

預金がなければ融資はできないわけですが、現在の低金利下では金融市場から低コストで資金調達することも可能です。そのため、バブル期のように必死になって預金を集める必要は無いのです。では、なぜ銀行が預金金利キャンペーンをするのか?それは「儲けになる種」を集めるためです。

冒頭、バブル期に私が銀行員として必死に預金を集めたことをお話しましたが、この頃は預金金利も借入金利も、いまでは信じられないくらいの高金利でした。銀行は預金金利より高い融資金利でお金を貸すことで「利ザヤ」として収益を上げてきたのですが、低金利下では金利自体が最低水準なので、利ザヤも騒然縮小して、もはや「金融仲介」だけでは、銀行の営業は立ち行かなくたってしまい、そこで他に収益を上げる道を模索し始めたのです。

たとえばある銀行では投資信託を扱って、その販売手数料を収益源にするとか、他の銀行では生命保険を販売して手数料をもらうなど、「何かを販売した手数料で食っていく」のが金融機関の生き残り戦略になってきたわけです。

そこで銀行は高金利で顧客を「釣って」、投資信託や個人年金などの運用商品(銀行など金融機関内部ではこうした販売運用商品を「預かり資産」と呼んでいます)を販売する、つまり「儲けになる種」を集めるために預金金利キャンペーンをするのです。言い方は少しキツイかもしれませんが、自虐ではなく銀行員の本心です。

銀行の預金金利キャンペーンで得するのは預金者か銀行か?〜銀行員が金利キャンペーンを資産形成に活かす方法を教えます

預金金利キャンペーンには、いくつかの種類がある

銀行の預金金利キャンペーンにはいくつかの種類がありますので、その内容と実例を紹介します。
(*キャンペーンが終了しているものも記載してありますので、あくまで参考としてください)

 <銀行・預金金利キャンペーンの種類>

  1. 対象者限定型
  2. 運用への入口型
  3. 新規開拓型

1.対象者限定型

1つ目は「退職金を預けるなら金利を高くします」といったように、対象者を限定するタイプです。
退職金は、サラリーマン生活で最後に、そしておそらく最も大きな金額を受け取るタイミングなので、銀行は退職金を取り込むことに力を入れているのです。

退職金を対象にしたキャンペーンは、同時に運用商品を購入した場合は金利がさらに高くなるといったように、同じキャンペーンでも差別化されているところも特徴の一つです。

【参考】
三菱UFJ信託銀行公式ホームページ/ご退職者特別プラン
三井住友銀行公式ホームページ/<資産づくりセット> 退職金によるお預け入れ
みずほ銀行公式ホームページ/みずほマネープランセット「退職金で運用プラン」
りそな銀行公式ホームページ/退職金コース(りそなの資金運用プラン)

2.運用への入口型

2つ目は「運用商品を購入するなら、ついでに定期預金も高金利にします」など運用をセットにするタイプです。
積立投信など、運用をスタートする人を取り込もうとするキャンペーンで、預金から一歩進もうとする投資初心者の人にアピールする商品設計が特徴の一つです。

条件としては、同時に指定された運用商品を購入する必要があり、また預金や運用を中途解約(売却)した場合にはキャンペーン金利が適用されなくなるといった注意点もあります。1つ目で紹介した退職金キャンペーンも、同時に運用商品を購入すると更に金利が高くなるなど、運用への入口型の特徴もあると言えます。

【参考】
PayPay銀行公式ホームページ/春から資産運用を始めたい方に向けたおトクなキャンペーン・常設特典を4つ開催!
三井住友信託銀行公式ホームページ/つみたて投資とセットで円貨定期預金金利優遇キャンペーン

3.新規開拓型

3つ目は新しく預金してくれるなら高金利といった、新規取引を開拓するキャンペーンのタイプです。
新しく口座開設するなど、取引をスタートする人だけ定期預金金利を高くするといったもので、こちらは昔からよくあるキャンペーンの典型的なタイプです。

【参考】
auじぶん銀行公式ホームページ/3ヶ月円定期が年1.0%(税引前) | 定期預金の金利がおトク

上記した以外にも「金利ではない付加価値で預金を集めるキャンペーン」もあります。
※例・口座を新規作成したら提携するポイントを付与するとか、抽選でプリペイドカードをプレゼントなど

いっぽう「夏・冬のボーナスキャンペーン」などは、不景気化を反映したのか、数が減っています。
他にもレアなケースでは「創立〇〇周年」などといった記念キャンペーンもあります。

いずれにしても、紹介した実例をご覧になるとわかりますが、やはり銀行の預金金利キャンペーンでは「タダでは金利を高くしない」わけで、これも銀行とはいえ営利企業なので、ある意味当然とも言えるのです。
いっぽう、銀行の金利キャンペーンにも注意すべき点がありますので、次項で説明します。

銀行の預金金利キャンペーンで得するのは預金者か銀行か?〜銀行員が金利キャンペーンを資産形成に活かす方法を教えます

銀行・預金金利キャンペーン・知っておくべき注意点

銀行の預金金利キャンペーンにも注意すべき点がいくつかあり、それは下記のとおりです。

 <銀行・預金金利キャンペーンで知っておくべき注意点>

  1. 宣伝の金利と実際の金利は微妙に違う?
  2. 途中でやめるとキャンペーンが消滅することも
  3. 実質的に手数料を払っている場合もある

注意点1.宣伝の金利と実際の金利は微妙に違う?

預金金利キャンペーンでは、金利を年利(1年間預けた場合の金利)で表現しています。
たとえば「キャンペーン金利年◯%!(期間3ヶ月)」などとアピールしていますが、この「期間3ヶ月」というのが注意点の一つで、要は3ヶ月しか預けられないので、1年◯%の金利は受け取れないということなのです。

《計算》300万円を定期預金にした場合(*税金は考慮せず)
A・年利1%で1年間預けた場合
100万円×年利1%×1⇒預入期間1年/1年=受取利息1万円  B・年利1%で3ヶ月預けた場合
100万円×年利1%×4分の1⇒預入期間3ヶ月/1年=受取利息2千500円

このように、預入期間を考えると、キャンペーンで「◯%!!」と言っても、実際にはその額面通りにならないこともあるので注意が必要です。とはいえ(期間3ヶ月)などと説明があるので、銀行がウソをついているわけではありません。

しかしキャンペーンではこうした「微妙な違い」はよくあるもので、やはり自分でしっかり確認することが大事ですね。

注意点2.途中でやめるとキャンペーンが消滅することも

こちらは運用商品の購入とセットで高金利が約束されているようなタイプにあることで、購入した運用商品を途中で辞めると、約束されていた金利がつかなくなるといったものです。

たとえば「指定の運用商品を中途解約された場合は、キャンペーンの適用が消滅し、店頭標準金利になります」といった注釈があります。

こちらは、上記した「儲けになる種を集めるためにキャンペーン」をしているので、ある意味当然とも言えますが、やはり契約時には注意すべきポイントです。

注意点3.実質的に手数料を払っている場合もある

運用をセットにしたキャンペーンの場合で、運用商品の中にも「販売手数料」「運用手数料」などが必要になるものもあります。一般的には投資したお金(元本)から手数料を差し引いて運用するタイプが多いので、感覚として手数料の負担感は無いかもしれません。

しかし、たとえば100万円で販売手数料1%の運用商品なら1万円(100万円×1%)の手数料を払っていることになるので、キャンペーンで受け取れる利息と差し引きで損していないか?などをしっかり考える必要もあります。

まとめ

今回は銀行の金利キャンペーンについて、わかりやすく解説してきました。銀行が「儲けになる種」を集めるためのキャンペーンですが、自分の資産形成に活かせる方法もあると知ってもらい、これからのマネーライフに役立ててください。

また、相談者から話しを聞き、適格なアドバイスをしてくれる独立系FPという存在もあります。銀行よりも(残念ではありますが)中立・公平な「視線形成へのセカンドオピニオン」を求めるのなら、FPの力を頼るのも有効だと銀行員の私は思います。この記事が、皆さんの参考になれば幸いです。