シングルの女性が住宅ローンを組むのはむずかしいのか?〜「女性」「シングル」はローン審査にどう影響するのか、銀行員が解説します。【前編】
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ライフスタイルや働き方が多様化している現在、「自分の家」の持ち方も昔とは変わってきています。そこで今回は「女性」「シングル」にスポットを当てて、住宅ローン審査に不利なのか?銀行員が解説します。
この記事は、私が勤務する銀行で後輩の若手銀行員向けの研修で「女性向けローン、女性の住宅ローン審査について」をテーマにした講義の内容をもとにしていますので、随所で融資を審査する銀行員視点から見た記載内容になっています。
※ 記事では女性について、シングルについて触れますが、決してそれらを否定するものではありません。時には違和感を覚える場合があるかもしれませんが、逆に住宅ローンでお金を貸す側の考え方などを知る参考にして下さい。筆者の私も、ジェンダー平等の社会であるべきと思っています。
このページの目次
「女性専用住宅ローン」は女性に有利なのか?
まず「シングル」に限定せず、広く「女性」という観点から、女性専用住宅ローンを解説します。
銀行など金融機関では「女性専用住宅ローン」「女性限定住宅ローン」といった住宅ローンを扱っています。ではこれら女性向けのローンは、どのような特徴があるのか?そして女性に有利なのか?などわかりやすく銀行員が解説します。
(なお女性専用住宅ローンについてはメガバンク、ネット銀行、地方銀行など各金融機関に関して、筆者が調べた内容に基づきます。実際にローンを検討する際は必ずご自身で確認してください。)
女性専用住宅ローンとは?
まず女性専用住宅ローンの特徴をトピックスでまとめてみました。
<女性専用住宅ローンとは?>
- 女性専用なので、女性しか利用できない
- 女性専用住宅ローンを利用できるのは当然ながら女性だけ「男性専用住宅ローン」というものはない
- 女性は一般的な住宅ローンに申し込むことも、もちろん可能
- 現時点で(ジェンダー平等の観点)外見は男性だが内面は女性の人、などについての動きはないようだが、今後は改正が予想される
- 地方銀行が積極的
- メガバンクも取り扱っているが少数
- 地方銀行と信金・信組では多く取り扱っている
- 特に地方銀行は積極展開しているので、インターネット検索でもヒットしやすい
- 女性向けのオプションサービスが利用できる
- 女性専用住宅ローンを利用すると、家事代行や、育児・介護サービス、旅行、グルメなどの会員制優待サービスを利用できるなど、オプションサービスが付帯されているものが多い
- 産休・育休のときは、申し込めば返済猶予してもらえる場合もある
- 産休や育休で収入が減少しているあいだ、申し込めば一定期間(1年から2年程度)のあいだ、現金返済猶予をしてもらい、利息払いだけで返済の負担が軽くなる場合もある
- 金融機関で審査、検討して対応してもらうので、申し込めば誰でも猶予してもらえるわけではない
女性専用住宅ローンの審査は女性に「甘い」のか?〜一般的な住宅ローンと比較して
トピックスにあるように、各種オプションサービスが付帯されていたり、産休・育休のときに元金返済を猶予してもらえる場合があるなど、女性専用住宅ローンは女性にやさしい商品設計になっています。
しかし融資審査は女性専用住宅ローンと一般的な住宅ローンは同一で、どちらか一方が審査が甘いことも、どちらかがきびしいこともないです。
これは女性専用住宅ローンで「申し込みできる方」といった条件欄を見ればわかりますが、女性だから年収基準がゆるい(例 年収300万円以上としている銀行で、女性専用では年収200万円からとなっている)ようなことはなく、女性向け住宅ローンだから審査が甘いようなことはないのです。
またこれと同様に、ローンの金利も女性専用住宅ローンだけ特別に低金利といったことはありません。中には「キャンペーンで特別に!」といった宣伝文句を見受けることもありますが、結局は人それぞれ属性など審査によって金利が決められるので、特に女性だけ低金利ということもありません。
「産休・育休の返済を猶予」〜借りる側にメリットはあるのか?
「出産・育児等で長期休暇を取得される場合、お申し出により最長◯年間の元金据置が可能です」などといった記載が女性専用住宅ローンの商品説明にあります。
たしかに産休・育休のときは収入が減るもので、返済負担が一時的にでも軽減されるのは嬉しいかもしれません。しかしながら、あくまで元金の返済猶予であって、決して返済が「チャラ」になっているわけではありません。
猶予した元金も産休・育休が終わってからは元通りに返済をしなければいけませんし、元金返済を先送りにしただけなので、原則的にあとから返済元金は増えることになります。このように元金返済を猶予するということは、言ってみれば「未来の自分に借金を払わせる」とも言え、メリットばかりではないのです。
元金猶予は依頼に応じて対応するものなので、もちろん通常の返済を続けていくこともできますので、ここは慎重に検討するべきだと銀行員は考えます。
女性専用住宅ローンは女性に有利なのか?〜銀行員はこう考えます
ここまで説明してきたように、女性専用住宅ローンは確かに女性だけのものですが、審査は一般的な住宅ローンと同じで、金利も特別扱いしてもらえるわけではありません。ですから女性専用住宅ローンは女性にやさしい、つまり「普通の住宅ローンに女性だけのおまけ(特典)がついている」とも言えます。
これは少し極端な表現かもしれませんが、そもそも女性だけ審査をゆるくしたなら、それこそ男女平等とは言えないと銀行員の私は考えています。
また特典など「オマケをつければ女性は喜ぶ」と考えているなら、それこそ時代遅れですし、女性に失礼だと思っています。そのためか、以前はもっと多くの金融機関で扱っていた女性専用住宅ローンも、現在は減少する傾向にあります。
たとえば私の勤務する銀行にも女性専用住宅ローンはありましたが、今は廃止されています。その代わりに住宅ローン(一般的な)を利用している女性向けの特典(エステサロンの割引券贈呈など)があるくらいで、それもいずれ無くなると思われます。
このように、女性向け住宅ローンが特に自分たちに有利なわけではないことを、女性に見透かされてきたので、これからも女性専用住宅ローンは減少していくのではないか、と考えています。
【後編】『シングル女性の住宅ローン審査・3つの「ハードル」とそれを飛び越える攻略法』に続く…