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2つめの「どうなる?」シングルの自分が死んだらローンはどうなる?

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〜シングルの自分が死んだときに考える3つの「どうなる?」を銀行員が解説します・第2部

いま独身の自分が死んだら何が起きるか?を一度整理して考えてみましょう。

  1. 自分が死んだら不動産はどうなる?
  2. 自分が死んだらローンはどうなる?
  3. 自分が死んだら資産運用、投資はどうなる?

そのとき何がおこるか?まずいことはなにか?今からできることはないか?を考える、今回はその第2部:シングルの自分が死んだらローンはどうなる?というお話です。

2つめの「どうなる?」〜シングルの自分が死んだらローンはどうなる?

自分が死んだときに住宅ローンやマイカーローンなどの借入が残っていた場合には、なにが起きて、どうすべきでしょうか?

ローンは大きく住宅ローンなどの「有担保(不動産などが借入の担保になっている)」とカードローンやマイカーローンなどの「無担保」に分かれます。
またクレジットカード代金やキャッシングも無担保の借入に含まれるというのが一般的な考え方です。

ここからは有担保借入として住宅ローンを、そして無担保はカードローンを例にそれぞれ説明していきます。

住宅ローンの場合

住宅ローンは団体信用生命保険に加入するのが一般的なので、シングルの人が死亡した場合は保険金で住宅ローンの残額は一括返済となる、つまり「死んだら保険でチャラになる」仕組みです。

団体信用生命保険とは?

団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りるときに加入する生命保険で、本人が死亡したり高度障害など保険契約で定められた一定の状態になると保険金が支払われ住宅ローンが完済されるものです。

この場合、保険料は毎回の住宅ローン返済に含まれるので、言い換えれば「自分が死んだら住宅ローンがチャラになる生命保険の保険料を分割払いしている」とも考えられます。

団体信用生命保険にもいくつか種類があり、ガンや脳卒中など成人病と診断されたら保険金が支払われるもの(「三大疾病」「五大疾病特約付き」などの名称です)や、過去に大きな病気をして一般的な団体信用生命保険に加入できない人に向け、加入条件が緩やかなタイプ(こちらは「ワイド団信」などの名称)もあります。

借入金は具体的にどうなるのか?

「死んだらチャラ」といっても自動的に借入がなくなるわけではなく、実際には誰かが団体信用生命保険の請求など一連の手続きをする必要があります

そのため、住宅ローンの団体信用生命保険に加入する際は「万一のときは法定相続人が死後の手続きをする」旨の規約が記載されていることがあり、さらに「本人死亡後の連絡先」を銀行から聞かれるのが一般的です。
そのあとは法定相続人(シングルの人なら両親など)が銀行で保険の請求からローンの担保を解除する手続きをすることになります。

とはいえ住宅ローンでは死亡から保険支払い、そして担保の解除まで事務的に粛々とすすむので、残された家族にもそれほど負担にはなりません

孤独死などは対応が変わる

ただし「孤独死」など、本人が死亡したことを誰も知らなかった場合は少し違ってきます。
こういったケースでは毎月返済が遅れはじめ、銀行から文書の督促や電話連絡、更には自宅訪問などがあります。

基本的には相続人など遺族が死亡を知らなくても、銀行で上記の延滞など「異常値」を感じた場合は、あらかじめ聞いてきた実家などに連絡し、その後に孤独死が判明してやっと手続きに進む場合もあるのです。(これは同僚が経験したケースです)

もちろんこの場合も、遅くなったとはいえ原則として団体信用生命保険でローンは完済されるのが一般的です。(*延滞金が多すぎると保険で全額カバーされない場合もあります)

私も、やはり返済が遅れて連絡が全く取れないお客様がいて、調査したところ本人が死亡したことがわかり、そのあとで法定相続人を探して、その人に手続きしてもらったことがあります。

基本的に相続人を把握するには死亡した本人の戸籍から調査するのですが、私のケースはまだ個人情報保護法の施行前だったので、正当な手段で比較的スムーズに調査することができました。しかし現在は戸籍の取得がかなり困難(個人情報保護法による)なので、手続きは難しくなっています。

2つめの「どうなる?」シングルの自分が死んだらローンはどうなる?

「団体信用生命保険無し」の住宅ローンは要注意

ここまでは保険でカバーされる住宅ローンを説明してきましたが、フラット35など一部の住宅ローンでは団体信用生命保険に加入しないでローンを借りることも可能です。

この場合は当然ながら団体信用生命保険が適用されないので、相続人に対してローンが負債としてマイナスの相続財産になります。

これは事業資金融資など団体信用生命保険制度がない借入も同様で、残された債務(借金)を、相続人がどうするか考えて対処する必要があります。

【参考③】 住宅金融支援機構・フラット35/よくある質問/健康上の理由その他の事情で新機構団信制度に加入しない場合も、機構融資を利用できますか?

https://jhffaq.jp/jhffaq/jhf/web/knowledge3411.html

死亡した人の担保について

不動産の相続の項で説明したとおり、死亡した人の不動産は相続で手続きすることになります。

そのとき、借入が残っていれば対応は上記しましたが、例えば団体信用生命保険で借入が無くなっても、その不動産の担保は自動的にはなくならず、こちらも登記手続きが必要になります。

担保は放置していても、自然消滅はしてくれない

「もう借金は無くなったのだから、そのままでもいいだろう」と考える人もいて、現実でも借入が終わって担保がそのまま、と言う不動産は銀行員の仕事柄見かけることもあります。
(中には「明治◯年 債権額◯円◯銭 債務者▲田▲左衛門」など大昔の担保が残ったままの不動産もあり、これなどは借りた方も貸した方も探すのが大変です。)

しかしながら、担保がついていれば、たとえ借金が無くてもそのままでは売却などができなくなります。その時にあわてて担保解除の手続きをしようとしても、債権者(お金を貸して担保を付けた相手、銀行や金融業者など)に連絡がとれなかったり、相手が合併や廃業などで会社が変わったり消滅したりしていると、さらに手続きが困難になりますし、それに応じて時間と費用は嵩むばかりです。

ですから、担保の解除は後回しにしてはいけません
この点はぜひ覚えておいてください。

2つめの「どうなる?」シングルの自分が死んだらローンはどうなる?

【参考】銀行員は「自分が死んだら読んで」と置き手紙を書いてあります

ここまで借金や担保について解説しましたが、私自身住宅ローンの借入があり、当然自宅は担保になっています。
自分が死んだらおそらく妻に手続きしてもらうことになるので、その時に備えて思いつく限りの手続きなど説明を「置き手紙」として書いて、自室の机の引き出しにしまってあります。

内容といえば、もしも自分が死んだらと仮定して

  1. 住宅ローンは銀行の窓口に連絡をして、死亡したので団体信用生命保険の手続きを依頼する
  2. ただしその前に、最低限必要なお金は事前に引き出しておくこと(死亡したと伝えると、銀行は預金口座を凍結するのが原則なので)
  3. 勤務先や健康保険、年金など死亡に関する窓口や、生命保険証券はどこにあって、連絡先はここへと保険代理店と担当名、連絡先電話番号などの一覧表を作成済み
  4. パソコンやスマホなどのIDやアドレス、パスワードの一覧表

その他にも、妻や子供が手続きで困らないようにと考えて、結構な長文の手紙になっています。こうした手紙を書いたのも、いつだったか「死亡した家族のスマホのパスワードが分からず、業者に頼んだら十数万円の費用が!」と行った記事を見たのがきっかけです。

そして、いまは幸い妻に怒られる、いえ申し訳ないような借金や隠し事はありませんが、それも今後できたしまった場合は、なんとか自分で解消しておくか、正直に打ち明けるつもりです。(そして手紙の最後には、妻への感謝も少しだけ(笑)書いてあります。)

遺言書などと大げさなものではありませんが「あとのことを頼む置き手紙」よろしければ参考にしてください。

カードローンやマイカーローンの場合

カードローンやマイカーローンは担保不要、保証人不要といった小口の借入です。
またクレジットカードやリボ払いの分割支払や、キャッシングも無担保借入に含まれます。これらは無担保借入は保証会社の保証付きが一般的です。

保証会社は銀行の子会社や保証専門の金融業者などで、ローン返済の保証をする対価として「保証料」を支払う仕組みになっています。
この保証料はローンの金利に含まれ上乗せされるので、原則として無担保ローンの金利は住宅ローンなどに比べて高めになっています。

保証会社の保証付きローンは団体信用生命保険の取り扱いはないので、相続人が銀行や保証会社と返済について話し合って対処していくことになります。

原則として、死亡した本人の財産から返済するので、やはり誰かが借金の手続きをする必要があります。

いっぽう数は少ないのですが、団体信用生命保険付きのマイカーローンやカードローンを扱う金融機関もあります。

【参考④】(*下記の引用は個別商品の宣伝ではなく、団体信用生命保険付き融資の紹介です。団体信用生命保険には加入条件があり、またローンには借入条件や審査もありますので、詳細は必ずご自身で確認してください。)

【参考④】 (マイカーローン) 十六銀行/マイカー・教育・リフォームローン団体信用生命保険

https://www.juroku.co.jp/personal/loan/loan_hoken.html

【参考④】(カードローン) オリックス銀行/カードローン/カードローン – ガン保障特約付きプラン「Bright」

https://www.orixbank.co.jp/personal/cardloan/cardif_insurance.html
2つめの「どうなる?」シングルの自分が死んだらローンはどうなる?

【銀行員は見た】順番に相続放棄され、相続人がいなくなった人

「ローンは団体信用生命保険でチャラ」と説明した通り、死後に借金が残らなければ良いのですが、こちらはその「死んで借金が残った」例です。

個人で化粧品店を経営していたシングル女性Cさん(40代)は、事業資金融資で数千万円の借入があり、私が融資係として担当していました。
経営は比較的順調で、融資も問題なく返済できていたのですが、あるとき体調を崩してお亡くなりになりました。
これは後日、実のお母さんが銀行に来店され、死亡されたことを知った形です。

Cさんは、シングルで子供なし、実家は母(父は他界)と祖父母(ともに健在)そして兄と言う家族構成でした。
Cさんの事業資金は、全て連帯保証人のいない形式でした。
保証人がいれば、原則としてその保証人が全額返済する義務があり、家族であっても保証人になっていなければ返済の義務はありません。

しかし最近は過度な保証人を求めない銀行の方針で、Cさんも保証人無しで借りていたため、家族は相続人として債務を背負うことになったのです。

そして、その後もお母さんが気丈に、銀行との窓口となり手続きをすることになりました。
みなさんは相続や法律に詳しくなかったので弁護士に相談し、家族のうち誰も借金を背負いたくないので、相続放棄をすることになったそうです。

「法定相続人が相続放棄をすれば、その人はもともと法定相続人ではなかったことになる(前出)」のですが、これも相続順位が上位の人から順繰りに放棄するのが大原則で、実母→祖父母→実兄と相続放棄を連続して行い、その手続きにも時間と手間がかかり、家族一同疲弊してしまったそうです。

そして、やっとのことで法定相続人が全員相続放棄をすることができ、銀行から債務を請求されることはなくなりました。(こうしたケースでは、銀行に残った借金は損金処理されるのが一般的です)

そして、最後にお母さんが来店した時こう述べられました。
「自分たちも生活があって娘の借金を背負い込むのは無理だったので、このような手続きをしました。でも(相続放棄に必要な)書類を書くときなどは、まるで娘がこの世に存在したことを、家族全員が否定しているようで辛かったです。」

お話をうかがって、私はどのように申し上げていいかわからず、ただうなずくことしかできませんでした。

ここまでのまとめ 〜2つめの「どうなる?」〜シングルの自分が死んだらローンはどうなる?

相続では死亡した人の遺産を引き継ぎますが、遺産は現金や不動産だけでなく、借金などマイナス、つまり「負の遺産」も引き継ぐ必要があります。

「財産はもらうけど借金はいらない」というわけにはいかないからこそ、相続はむずかしいとも言えるのです。
ただ、やはり借金を残すのは避けたいですし、残ってしまいそうな心配がある人は、やはり家族に万一のときのことをしっかりと話しておくことが重要です。

また借金をカバーできないまでも、シングルの人が自分の死後に借金を含めて面倒見てくれそうな人に死亡保険金を残せるような生命保険に加入するのも一つの考えです。

このあたりもFPなど信頼できるプロなら、資産形成や投資運用とは違った観点でアドバイスをもらえるかもしれません。