老後資金で見落としがちな介護の保障 ~介護保障の重要性とその備え~
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ライフプランにおいて、「老後資金」は重要なテーマです。特に介護の必要性とその費用については、多くの方が不安を感じているのではないでしょうか。しかし、老後資金の確保や老後に備えた保険を検討する際に、介護の保障について見落としてしまうことが少なくありません。
今回は、介護に関する費用や、自己負担額、施設選び等、老後の介護に備えるためのポイントを詳しく解説していきます。
このページの目次
介護にかかる費用とその内訳

1.初期費用と月々の生活費
介護が必要になった場合に、まず考慮すべきは初期費用と月々の生活費です。在宅介護の場合は、住宅改修や介護用ベッドの購入等、一時的な費用が発生します。
一方、施設介護の場合は、入居一時金や月々の利用料が必要となります。これらの費用は、介護の種類や施設の形態によって大きく異なります。
2.平均的な介護費用と総額
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、介護に必要な費用の平均額は以下の通りです。
- 一時的な費用:平均 74 万円(住宅改修や介護用ベッドの購入費等)
- 毎月の介護費用:平均 8 万 3,000 円(在宅介護、施設介護の平均)
介護を行う場所ごとの毎月の介護費用の平均は以下の通りです。
- 在宅介護:平均 4 万 8,000 円
- 施設介護:平均 12 万 2,000 円
介護の平均期間は約 5 年 1 ヶ月と言われています。これらを計算すると、介護にかかる総額は、在宅介護の場合約 293 万円、施設介護の場合約745 万円となります。
介護費用の自己負担と公的支援

介護が必要になった場合に、費用の負担をできるだけ抑えるためには、公的支援の活用が欠かせません。
しかし、公的支援だけでは全ての介護費用をカバーできないため、自己負担額がどのくらいになるのかを把握しておくことが重要です。
1.介護費用の自己負担額の目安
介護保険制度を利用しても、自己負担が発生するケースは多くあります。厚生労働省のデータによると、要介護 3 の方が特別養護老人ホームに入所した場合、月額費用の平均は約 13万円〜18万円です。そのうち、介護保険適用分を除いた自己負担額は約 4万円〜7万円程度になります。
ただし、この金額には食費や居住費、その他の生活費が含まれていないため、実際の負担額はさらに増えることになります。また、在宅介護の場合は、訪問介護やデイサービスの利用料に加え、住宅改修費や介護用品の購入費も自己負担となります。
2.介護保険制度の仕組みと利用条件
日本の公的介護保険制度とは、40 歳以上の国民が加入し、保険料を納めることで、将来的に介護サービスを受ける際の自己負担を軽減する仕組みになっています。
介護保険の基本的な仕組み
- 要介護認定を申請する
介護保険サービスを利用するには、市区町村の窓口で「要介護認定」を申請する必要があります。 - 要介護度の判定
介護の必要度に応じて「要支援 1~2」「要介護 1〜5」の 7段階に分類され、それに応じた支援を受けられます。 - ⑶ 介護サービスの利用
認定を受けた後、ケアマネージャーと相談しながら、訪問介護や施設利用などの介護サービスを利用します。
介護保険を利用すると、原則としてサービス利用料の 1割〜3割を自己負担することになります(負担割合は所得に応じて異なる)。
例えば、要介護3の方が訪問介護サービスを月に10回利用した場合、1回あたりの費用が約 5,000円とすると、自己負担額は月額 5,000円~15,000円程度になります。
3.介護費用を軽減するための公的支援
- 高額介護サービス費制度
介護保険を利用している方の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
例えば、一般的な所得の方(世帯の年収約 156 万円~370 万円)の場合、自己負担上限額は月額44,400円です。その月に支払った自己負担額がこの上限を超えた分は、申請を行うことで還付されます。 - 高額医療・高額介護合算療養費制度
療費と介護費が同時に発生した場合に、自己負担額を軽減する制度です。例えば、医療費と介護費の合計が年間で一定額を超えた場合、超過分の費用が払い戻されます。 - 介護用品支給・貸与制度
要介護者が使用する介護用品(紙おむつ、車いす、介護用ベッドなど)の購入費の一部が助成される制度があります。所得条件によっては無料または低額でレンタルできる場合もあります。
このような公的支援を上手に活用しながら、自己負担を抑えつつ適切な介護サービスを受けることが大切です。
施設介護と在宅介護の選択

介護が必要になった場合に、在宅介護と施設介護のどちらを選択するかは大きな決断になるでしょう。介護を受ける方の身体状況や介護を行う家族のサポート状況、経済的な負担などを総合的に考える必要があります。
1.施設介護の種類と費用
施設介護にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や費用が異なります。
施設の種類 | 特徴 | 月額費用(目安) |
特別養護老人ホーム(特養) | 低所得者向け、公的施設、 要介護 3 以上で入所 | 約10万~15万ほど |
介護付き有料老人ホーム | 24 時間介護サービス、 手厚いケア | 約15万~30万ほど |
サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住) | バリアフリー住宅 +生活支援サービス | 約11万~20万ほど |
グループホーム | 認知症高齢者向け、 少人数制 | 約8万~14万ほど |
施設介護の最大のメリットは、専門スタッフによる介護が受けられることです。家族の負担が少なく、安心してプロに任せられる一方で、入居費用や月額費用が高額になるため、十分な資金準備が必要です。
2.在宅介護のメリットとデメリット
在宅介護は、介護を受ける方が住み慣れた環境で生活を続けられるというメリットがありますが、家族の負担が大きくなることが課題です。
在宅介護のメリット
- 住み慣れた自宅で生活できる
- 施設に入るよりも自由度が高い
- 費用を抑えられる可能性がある
在宅介護のデメリット
- 介護者(家族)の負担が大きい
- 介護サービスの利用回数によっては費用がかさむ
- 住宅改修や介護用品の準備が必要
在宅介護を選択する場合は、家族の負担を軽減するために、訪問介護やデイサービスなどの外部サービスを上手に活用することが重要です。
老後の資金計画と介護への備え

1.貯金と退職金の活用
介護費用を賄うためには、計画的な貯金や退職金の活用が重要です。特に介護期間が長期化する場合や、施設入居を選択する場合には多額の資金が必要となります。
2.生命保険や損害保険の活用
生命保険や損害保険を活用して、介護費用に備える方法もあります。介護保障が付帯された保険商品を選ぶことで、将来的な介護費用の負担を軽減することが可能です。
ひとり暮らしの方が注意すべきポイント
1.介護サービスの確保
一人暮らしの場合、家族によるサポートが期待できないため、公的な介護サービスや地域の支援を積極的に活用することが重要です。地域包括支援センターなどに相談し、適切なサービスを受けられるよう準備しましょう。
2.生活費の見直しと資金計画
一人暮らしの方にとって、老後の生活費を計画的に管理することは非常に重要です。介護が必要になると、食費や光熱費などの生活費に加えて、介護費用も発生します。
そのため、以下のポイントを考慮しながら資金計画を立てることをおすすめします。
- 固定費の見直し
通信費や保険料など、毎月発生する支出を見直すことで、将来の介護費用を確保しやすくなります。 - 収入源の確保
退職後も働ける環境を整えたり、副業を考えることで収入を増やすことが可能です。 - 貯蓄と投資のバランス
老後の資金を確保するために、低リスクの資産運用を検討するのも有効です。
また介護施設へ入居する場合には、入居費用や月額費用を事前に十分確認し、無理のない範囲で選択することが大切です。
介護保障を考慮した保険の選び方

1.介護保障付きの保険とは?
介護保障付きの保険とは、将来的に介護が必要になった際に給付金を受け取れる仕組みとなっています。保険の種類によって、一時金としてまとまった額を受け取れるものから、月額で給付を受けられるものなどがあります。
一般的な介護保障付き保険には以下の種類があります。
- 民間の介護保険
公的介護保険でカバーできない費用を補うための保険。 - 医療保険の特約
がんや脳卒中などの病気によって介護が必要になった場合に備えるもの。 - 生命保険の介護特約
死亡保障と合わせて介護保障も受けられるタイプ。
2.保険選びのポイント
介護保障を考慮した保険を選ぶ際には、以下のポイントを確認しましょう。
- 保障内容の確認
どのような状態になった場合に給付金が受け取れるのかをチェック。 - 保険料の負担
現在や老後の生活費を圧迫しない範囲で保険料を設定する。 - 給付金の受け取り方
一時金か、月額給付か、自分のライフスタイルに合ったものを選ぶ。 - インフレリスクへの対応
将来的に介護費用が上昇する可能性があるため、保障額が適切かを確認する。
将来の介護に備えるためのポイント

本記事で紹介したポイントについて確認し、今からできる準備を一つずつ進めていきましょう。
- 介護費用の総額を把握する
→ 介護費用は平均 293 万円~745 万円程度かかるため、早めの資金確保が必要。 - 公的介護保険制度を活用する
→ 介護保険を利用すれば自己負担額を軽減できるが、要介護認定が必要。 - 在宅介護と施設介護の違いを理解する
→ ひとり暮らしの場合は施設介護を視野に入れ、費用面を考慮する。 - 生活費を見直し、資金計画を立てる
→ 退職金や貯蓄の使い方を考え、無理のない範囲で準備する。 - ひとり暮らしの場合は、地域の支援を活用する
→ 最近では地域の支援が多くなっています。上手に活用して心に余裕を。 - 介護保障付き保険を活用する
→ 一時金や月額給付が受けられる保険を選び、老後のリスクに備える。
まとめ
老後の安心した生活には、介護費用の準備と適切な保障の確保が欠かせません。不安を減らすためには、「知ること」「計画すること」「準備すること」が大切です。公的支援や保険を上手に活用し、自分に合った介護保障をしっかりと整えていきましょう。今から少しずつでも準備を始めることで、将来の安心につながります。
「何から始めたらよいかわからない」「入っている保険だけで必要な保障があるかわからない」
「新たに介護保障を検討したい」という場合はプロに相談するのもおススメです。
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