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企業の利益を経済成長につながる投資に回すための対策 ~2020年度税制改正ポイント・企業編~

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前回の個人編でお伝えしましたが、今回の税制改正は、経済成長を促す施策に重点が置かれています。
戦後最長の景気拡大が続いていても「景気回復を感じられない」要因の1つに、「企業がためこんだ内部留保」を指摘する声があります。
この「内部留保」を成長につながる投資に回しやすくする施策や、納税回避対策などを盛り込み、経済成長を促進すべく企業に対してもアプローチする動きが出ています。

個人に直接関係することではありませんが、こうした動きは個人の給与アップにつながることが期待できますので、おさえておくと良いでしょう。

企業の投資、技術革新促す

オープンイノベーション税制

企業が配当などに回さずに蓄えとして内部に残している利益剰余金、いわゆる「内部留保」は、昨年度は463兆円に膨らみ、企業が保有する「現金・預金」も昨年度は223兆円にのぼっています。

こうした資金を企業が投資に振り向ける環境を整えるため、一定の要件を満たしたベンチャー投資を行う既存企業を対象とした税制優遇措置を創設します。
これには、既存企業が人材・技術・資本の閉鎖的な自前主義、囲い込み型の組織運営を脱し、ベンチャー企業と連携した技術革新を進めることで国際競争力を強化するねらいがあります。
要は、「他国に劣らない経済成長をしてくために、企業間の垣根を超えて協力し合ってくださいね」と国が奨めているのです。

設備投資要件の厳格化

さらに収益が拡大しているのに設備投資に消極的な大企業に対しては優遇税制の適用を厳しくします。
企業が投じた試験研究費に応じて法人税の負担を軽減する「研究開発税制」などは現在、設備投資額が減価償却費の1割以下だと税の優遇を受けられなくなりますが、この基準を「3割以下」と厳しくすることでより活発な資金の活用を促します。

「5G」整備促進

さらに、次世代の通信規格、「5G」の導入を促進するための優遇措置を設けます。
携帯電話会社が、5Gの基地局を計画よりも前倒しで整備したり、地域の企業が5Gの技術を工場や建設現場などに活用してサービスを独自に展開する「ローカル5G」の設備を整備したりする場合に、本年度から2年間、税負担を軽減します。

デジタル課税

国境をまたいだデータのやり取りで利益を上げる巨大IT企業などへの課税について、世界135の国と地域でつくる国際的な枠組みは、企業の利益のうち一定の割合を国ごとの売上高の規模に応じて課税できるようにするなど、新たな課税ルールの具体策を、本年中に取りまとめることを目指しています。

税制改正大綱では、ルールの策定に向けて、「一国主義的な課税措置で各国がばらばらに対応すれば、不確実性を増加させ、企業活動に負の影響をもたらす」として、国際合意に基づいた解決策を早期に見出すべきだと指摘しています。
そのうえで、適切に利益を計上している企業の税負担に大きな影響を与えないようにすることや、新しいルールの対象となるビジネスの範囲を限定し、定義を明確に定めることを求めています。

納税回避対策

企業が納める法人税をめぐっては決算上は、多額の利益を上げている企業が、海外にある子会社との間で株式の配当や譲渡によって巨額の損失が生じた形を取って税務上は、赤字を計上し、国内での法人税を支払っていなかったケースが問題視されています。
このため、企業が50%を超える株式を保有する子会社から、1年間に、株式を取得した際の価格の10%を超える額の配当を受けた場合、株式の価格から配当額のうちの非課税分を減額して株式の評価を下げます。
これによって、配当を支払ったあと価値が下落した子会社の株式を譲渡することで、巨額の損失を生じさせるといった納税を回避する行為ができないようにします。

まとめ

政府が「貯蓄から投資へ」と主張して久しいですが、法人も個人も「貯蓄から投資へ」はあまり進んでいません。
今回の税制改正が「貯蓄から投資へ」を浸透させる起爆剤となり得るのか、今後の動向が気になるところです。

出典:NHK NEWS WEB『2020税制改正 ‐暮らしどう変わる‐』
令和2年度税制改正要望(経済産業省)『オープンイノベーションを促進するための税制措置の創設』

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