変動金利のままにするか?このタイミングで固定金利にするべきか?
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「変動金利で住宅ローンを返済中だけど、最近、金利上昇が騒がれて不安になってきた。自分も固定金利に変えたほうが良いのかな?」
これは最近(記事執筆現在・2023年2月)になって、私の銀行窓口でお客様から
受けた相談です。
そこで、銀行員の私はこう答えました。
「金利を変えるか?このままにするか?はお客様ご本人が決めることですが、
いまはしばらく様子を見てはいかがでしょうか?」
報道やネット記事では住宅ローンの金利に関して心配になる記事ばかりですが、
不安をあおる声に惑わされず、しばらく様子を見て欲しいと銀行員は考えています。
この記事では、住宅ローンの金利について、皆さんに知ってもらいたいこと、
考えていただきたいことを解説します。
ここでお話しするのは、私が銀行員として実際にお客様からの相談にお答えしている内容です。
いま住宅ローンを利用中の人も、住宅ローンを検討している人も、
目の前に銀行員がいるイメージで、ぜひ参考にしてください。
このページの目次
銀行員が「変動金利の人はしばらくこのままで良い」と考える3つの理由
金利について不安になっても、しばらくは変動金利のままで良いと、銀行員の私は考えていますが、そう考えるのは3つの理由があるからです。
<銀行員が「変動金利の人はしばらくこのままで良い」と考える3つの理由>
1・上昇したのはこれから借りる人の固定金利で、かつ「値引き前の定価」
2・「変動金利が急上昇する可能性は低い」と言える過去のデータがある
3・固定金利に変えれば安心でも返済は増えるが、変動金利ならすぐに返済は増えない
上昇したのはこれから借りる人の固定金利で、かつ「値引き前の定価」
最近目に付く記事に「メガバンクの金利が上昇」と言った見出しがあります。
しかしネット記事は耳目を集めるため、返済中のローン金利が上昇したかのような見出しにしているだけで、そのような事態にはなっていないので、あせる必要はありません。
なぜかというと、実際に上昇しているのは新規で借りる人の固定金利で、
しかもディスカウントする前の基準金利という「定価の金利」だけだからです。
基準金利は「店頭金利」「標準金利」などとも表現され、実際はここから銀行との
取引内容や年収といった属性に応じ引き下げ(優遇)した金利が適用されます。
たとえば三井住友銀行の場合、基準金利は2022年12月・2.72%が2023年1月に2.99%と上昇しています。(固定金利の期間が20年超35年以内)【参考①】
しかし現在、三井住友銀行のキャンペーンで同じ期間の固定金利は2.49%です。
そしてこちらは12月から1月にかけて変動はありません。【参考②】
新規で住宅ローンを借りるときには、こうしたキャンペーン金利(基準金利から優遇して引き下げた金利)が適用されます。
基準金利は言ってみれば理論的な金利であって、実際に適用されるキャンペーン金利は変動がないのです。
そして、いま返済している固定金利の人は、当然ながら金利も返済額も変動していません。(そもそも固定金利なので金利が変動することはありません)
さらに、いま返済している変動金利の人も金利は上昇していませんし、
銀行HPなどにもそのような記載は見当たりません。
ちなみに私も住宅ローンを変動金利で返済中ですが、銀行から金利についての連絡や手紙などはいっさい来ていませんし、もちろん毎月の返済額は変わりません。
【参考①】
三井住友銀行/住宅ローン 金利水準推移(新規)https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/shinki/kakokinri.html
【参考②】
三井住友銀行/金利・住宅ローン
https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/kinri/#shinki
「変動金利が急上昇する可能性は低い」と言える過去のデータがある
では、現在まで変動金利は「変動」してきたのでしょうか?
住宅ローン変動金利の動きを、時系列で並べてみました。【参考③】
(ちなみにバブル崩壊前後から、私の銀行員生活とほぼ一緒なので、改めて見ると感慨深いものがあります)
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変動金利の基準金利(固定と同じで実際はここからディスカウント)は現在2.475%程度
30年以上前、バブル絶頂の1984年の変動金利は8%を超えていた
金利は上下動を経て1991年に近年の最高水準(8.9%)に達した。
しかし直後にバブル崩壊となり、1996年まで金利は急降下、その後は2%後半の水準でほぼ横ばいとなる
その間も上下動はあったが2001年の2.375%~2006年・2.625%までの上昇にとどまる
その後も景気動向などから若干低下し、そのあとは長い間2.475%で現在まで続いている
これが過去の流れで、もし2001年から30年ローンを変動で借りた人は、ほぼ固定金利のように、金利は動かなかったことになる
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これが今までの動きを簡単に並べたものですが、過去がそうだから今後も上がらないとはもちろん言えません。
しかし、過去の推移をみるなら、ここから1年以内、あるいはたったの数か月で1%・2%などダイナミックに変動金利が上昇するとは考えにくいです。
また、そもそも住宅ローンの変動金利は新長プラ(新長期プライムレート)に連動する形式ですが、この新長プラも、もとをただせば銀行が決めている金利なので、銀行のさじ加減で上げることも下げることもできるのです。
ネット記事の一部では「長期金利が上昇したら、今度は変動金利の基になる短期金利も上昇するのでローンの変動金利も上昇する」と断言している記事も見受けますが、そもそも理屈に合っていないのです。
そして今後は「他行が変動金利を上げたから、他行のローンを取り込むためにウチは上げない」という銀行も出てくる可能性があると思います。
ここまでまとめますと、過去がこうだったから変動金利が上がらないとは断言はできませんが、過去のデータから急上昇することは少ないとも考えられます。
そして、ローンが残り何年か?を考えれば、残り年数では金利が上がることもないだろうという考えも間違いではないと思います。
【参考③】
住宅金融支援機構・フラット35/住宅ローンの基礎知識/民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)
https://www.flat35.com/loan/atoz/06.html
固定金利に変えれば安心でも返済は増えるが、
変動金利ならすぐに返済は増えない
ここで金利を固定金利にすると、確実に金利は上昇しますので、当然ながら返済も増えることになります。
いっぽう変動金利のままなら、すぐに返済が増えることはないのです。
では、いま固定金利に変えると返済額はどのくらい増加するのでしょうか?
以下の条件でシミュレーションしてみました。
<借入額25百万円・返済期間30年・変動金利1.0%・15年経過した現在残高は1,343万円>
この人の毎月返済は現在80,409円ですが、これを固定金利2.49%に変更するとどう変わるでしょうか?
①現在:毎月返済額80,409円 最終回までの利息概算額3,947,556円
②固定金利にすると:毎月返済額89,521円
③変動金利から固定金利にすると、毎月返済額が9,112円増えることになる
このように、自分で固定金利に変えるのは、ある意味で自分からすすんで金利を上げているとも言えるのではないでしょうか?(シミュレーション【参考④】)
【参考④】
みずほ銀行/ネット住宅ローンシミュレーション
https://www.mizuhobank.co.jp/cgi-bin/loan/net_payment.cgi
金利が不安なら~いまできること、考えるべきこと~
金利が不安な人は、いまできること、考えるべきことはいくつかあると銀行員は考えます。
▼固定金利で安心を手に入れる選択も
上記で説明したように固定金利に変えるのも、決して間違いとは言えません。
返済が増えたとしても、固定金利で安心を手に入れる対価として自分が
納得できればいいわけです。
また固定金利にすれば、当然ながら金利変動、返済額変動はありませんので、
毎月の収支も固定され、資産形成なども考えやすくなります。
▼借り換えは慎重に
この機会に他の銀行に借り換えを考える人もいると思いますが、ここは慎重に考えてください。
たとえば、いま変動金利の人が他の銀行に変動金利で借り換えをしても、変動金利は変動金利なので、今後金利が上昇して返済が増えるかもしれない、というリスクはそのまま付いてきます。
また、いま変動金利で返済中なら、そもそも金利はそれなりに低いはずです。
したがって、借り換えをして返済額が減るメリットも決して毎月何万円、などと大きくはなりません。
もしかしたら毎月数千円、あるいは数百円の軽減だけなら、金利上昇局面になればそのメリットも「吹っ飛んで」しまうかも知れません。
金利上昇に備えた資産形成を考える
住宅ローンを返済している人は、ローンがない人以上に資産形成を考えていることと思います。
たとえば
「病気やけがで長く休職したときのためにお金を貯める」
「給与を保障してくれる保険の加入を考える」
などがあげられます。
そして、金利への不安が高まる中では住宅ローンの金利上昇・返済額の増加に備えることも考える必要があります。
たとえば金利が上昇すれば運用が上向くことが見込める投資・運用を検討するなどで、やはりこのあたりはFPなどに相談するのもおすすめです。
まとめ
ここまで説明してきたように、銀行員としては変動金利で金利にも納得しているならしばらくはこのまま様子を見てもいいのでは?と考えます。
それは決して臆病ではありませんし、また金利が短期間で急上昇する懸念も少ないと思いますので「乗り遅れる」こともないと思うからです。
ただ、住宅ローンの金利についてなら銀行員は対応できますが、その時に備えて今からどうするべきか?
こちらはFPなど信頼できるプロに相談することをおすすめします。
銀行員とは違った、幅広い視野でアドバイスをもらえるのはやはりFPです。
住宅ローンの金利だけでなく、将来に向けた資産形成まで考えたいなら、この記事が参考になれば幸いです。