米vs中。通貨競争から私たちの資産作りを考える
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朝日新聞のオピニオンに、世界の通貨に関する興味深い記事を見つけたので、その内容にふれつつ、その記事から派生した自論として「私たちの資産作り」についてお話したいと思います。
当該記事『デジタル人民元の行方 経済学者、エスワー・プラサドさん』では、
五輪会場で選手たちが紙幣でも硬貨でもない「デジタル人民元」を使えるようにして、中国政府は金融技術の力をアピールしていること。
この動きによって、第2次世界大戦後、基軸通貨の米ドルを武器に国際金融の秩序を支えてきた「米国との覇権構造が変わるのか」について言及。
国際通貨基金(IMF)の中国部門責任者を経て米コーネル大学の教授となった経済学者、エスワー・プラサドさんの見解を知ることができます。
「選手の方々の活躍に私がワーキャー色めきだっている間に、なにやらすごい人がすごい考察をしている!」
パッと頭に浮かんだのは何とも凡庸な感想なのですが、よくよく読んで、「私たちが普段お客様に伝えている、今の生活を維持する秘訣につながる」と感じたので共有します。
何だか遠い次元の話と思われるかもしれませんが実は、ごくごく普通に暮らす私たちの生活にも関係するお話なので、是非最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
このページの目次
なぜ、米ドルが基軸通貨として覇権を維持できたのか?
私が注目したのは、米ドルがなぜこれまで基軸通貨として覇権を維持できたのか、その理由についてです。
キーワードは2つ、『信用』と『安全な場所』です。
具体的に見ていきましょう。と、その前に・・・
「基軸通貨って何?」というところを説明してから本題に入りたいと思います。
基軸通貨とは
基軸通貨とは、国際通貨の中で中心的、支配的な役割を占める通貨のこと。
現在は米ドルを指し、国際間の決済や金融取引などにおいて広く使用されています。
米ドルの国際決済額に占める比率は、全体の約4割。
一方、人民元の占める比率は1%余り。
各国政府が保有する外貨準備の比率でも、米ドルが全体の約6割なのに対し、人民元は2%強と、20倍以上の開きがあります。
米ドルは世界から見て『信用』に足る『安全な場所』
米ドルが基軸通貨として覇権を維持できたのは、米ドルが世界各国から見て『信用』に足る『安全な場所』だからです。
そして、次に挙げる要素が、米ドルが『信用』に足る『安全な場所』として存在できる下支えとなっています。
・強い米国経済
・高度に発達した金融市場
・法の支配や三権分立といった権力の抑制と均衡のシステム
・独立した中央銀行をはじめとする金融取引を支える制度上のインフラ
人民元はドルの地位を脅かす存在になる?
現在の人民元は、国際決済額に占める比率が1.38%。
世界の外貨準備に占める比率が2.66%。
基軸通貨とはほど遠い状況ですが、「デジタル人民元」の国際化が進むとどうなるのか、気になるところです。
人民元はドルのような基軸通貨になれない
エスワーさんは、このように述べています。
『ドルのような基軸通貨に、人民元がなれるとは思っていません。
それは、デジタル人民元になっても変わりません。
これから10年~20年の間に人民元の役割は高まっていくでしょうが、国際金融において支配的な地位を得ることはないでしょう。』
支配的な地位を得ることはない理由として、先に挙げた米ドルが基軸通貨足り得る理由を挙げるとともに、こうも語っています。
『人民元は法の支配などの制度的なインフラがないのに、準備通貨に組み入れられている『例外』です。
中国共産党はいまのところ、自国における統治体制の改革に踏み込む気はないことを明確に打ち出しています。』
中国自身も望んでいない
『人民元でドルの覇権に真剣に挑もうという意欲があるとは考えにくい。』
そうエスワーさんが結論づける背景には、中国が抱えるジレンマも指摘されています。
人民元のさらなる国際化のメリットを享受するには、資本取引の規制緩和や、不透明な為替政策を見直す必要があるけれど、中国政府は『国外の投資家は信じきれない』。
そして『資本への支配力』は失いたくない。こうしたジレンマを抱えています。
したがって、中国が「デジタル人民元」を推し進める狙いは、『民間企業のデータ独占の阻止』や、『米国が中国に有効な金融制裁をかけられないようにする』といったものであり、『国際化はあくまで付随的なもの』と結論づけています。
今後、通貨としての地位が揺らぐのは日本
『「デジタル人民元」をもってしても、米ドルの地位はゆるがない』というのがエスワーさんの見方ですが、私たちが日ごろ使っている日本円の地位は揺らぐ可能性が指摘されています。
日本銀行のデジタル通貨の検討が中国に比べ遅れていることに触れ、
『今後、通貨としての地位が揺らぐのは、日本やユーロといった第2線の通貨でしょう。日本は、国際金融システムのなかで、どんな立ち位置を目指すのか、重要な決断を迫られています。ある国で使いやすい決済・金融サービスは世界のどこでも使われる可能性があり、デジタル通貨の世界的な競争が始まっています。日本政府が金融分野での技術革新を強く促せるかどうかが鍵を握ると思います』と結んでいます。
通貨の地位に着目した理由
私が当該記事を皆さんに紹介したのは、通貨の地位に着目する意識を、記事を通してもっていただくことができれば、と考えたからです。
日本で生活していたら、日本円以外のことを意識する機会って滅多にないですよね。
あるとしたら、海外旅行に行くときくらいなものだと思います。
でも、これから資産作りや資産運用をしていくうえでは大事な意識です。
通貨には、その国の国力を表すという一面があります。
日本円の地位が揺らぐ、つまり日本円の実力がどんどん弱まっていくことが予測されるなかで、日本円だけで資産作りや資産運用をしていては、お金は増えているのに、“使えるお金”は減っているという困った事になりかねません。
というのも、日本円の実力がどんどん弱まっていくということは、今と同じものを買うとしても、今以上にお金がかかることだからです。
この、日本円の実力が弱まっている現状については、『弱る円』というタイトルで新聞記事にもなっていましたので、次回詳しく紹介させていただきたいのですが、
その前に、以下のコラムもご覧いただけたら、理解が深まると思います。
『女性のためのマネーセミナー「マネレピ」《神戸・大阪》参加したら何がわかるの?』内、2.5「投資や資産運用、初心者は何から始めればいい?」
『貯蓄しているのに貯蓄が減る!?低金利下の貯蓄で気をつけたいこと』
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