【FPが解説】50代からの老後のライフプラン設計
- 定年間近
- 老後
- マネープラン
年を重ねていくと気になるのが老後のこと。
ですが、具体的に何をしたらいいのかわからなくてそのまま…という方は多いのではないでしょうか。
あなたがいま何歳かによって、ライフプランを考えるうえで気をつけたいポイントが変わってきます。
今回は、50代の方にむけた将来設計(定年後のプランニング)についてお話したいと思います。
⇒60歳手前~60歳前半の方にむけた記事はこちら
このページの目次
30代40代との違い【まずは大事な心構え】
50代は、30代40代と比較して、すでに定年がせまっている年代でもあり、意識はとても高いです。
しかし、弊社のマネーセミナーにご参加くださった50代の方からのアンケートなどでは、
「今から準備と言っても、もう遅いと感じた。もっと早くにこの話を聞きたかった」
「今までなんとなく貯蓄はしてきたけど、計画はしっかり立てたことがないので焦ります」
という感想をいただくこともあります。
この世代の方は、意識が高い反面「十分な準備をするには、いまさら間に合わない」と感じている方も多いです。
確かに30代40代から準備を始めている方と比べると若干不利な部分もあります。
ですが、実際には50歳からでも決して遅くはないですし、そのほうが現実的でもあります。
なぜ50代のほうが現実的かわかりますか。
そこには30代40代から50代にかけての環境や心境の変化が関係していますので見ていきましょう。
キャッシュフロー(お金の出入り)の問題
様々な統計を見ても、年間に貯蓄できる金額は、20代から徐々に増加し40代で一度停滞します。
なぜならこの世代は、教育費や住宅ローンの負担が一番重くなる時期であること、年収の増加に伴い税負担が大きくなるために可処分所得(自由に使える手取り収入)が思ったほど伸びないからです。
そのため、この時期に貯蓄額を増やすことは困難である方も多く、将来に備えたマネープランを考えようと思っても、実際には手が回らないということがあります。
定年後の生活に対する現実感のなさ
弊社には様々な世代の方がご相談に来られます。
30代40代の方にもすでに計画性を持って準備していく意識が高い方はおられますし、実際それが一番理想的で負担も少なく、将来的にはプラスとなります。
しかし、総じて意識が高いかと言うとやはりそうではありません。
「まだずいぶん先のこと」と、定年後について考えるにはピンとこないのだと思います。
実際には、定年の2~3年前くらいから本格的に考え始めるという方も多いのです。
とはいっても、さすがに直前では計画も思うようにいきにくくなるケースがありますので、金銭的に余裕が生まれ、リタイア後のことが現実感を持って考えられるようになる50歳前後は、定年後や老後について考えるには一番適している時期といえます。
そして同時に、最後のタイミングでもあるので「そのうちに…」と後回しにしないことが大切です。
50代からの老後のライフプラン設計
では、具体的にどのように準備をしていけばいいのでしょうか。
60歳以降の働き方について考える
2013年に「高年齢者雇用安定法」が改正され、原則65歳までの雇用が義務化されました。
これは一見、年金が支給されない「空白の5年間」(60歳に定年退職し65歳から年金を受給する)に対する不安が解消したように思われますが、必ずしもそういうわけではなく、5年間働く機会が得られますが、それまでの現役期間とは環境が大きく変わります。
一般的には、収入も再雇用後は大きく減少するケースが多いですし、65歳以降も引き続き雇用となると難しいと思います。
ところが、最も多くの人が亡くなる年齢は男性88歳・女性92歳(厚生労働省 令和元年
簡易生命表)ということを考えると、仮に65歳まで働いたとしても、その後さらに20年~30年は生きることになります。
そのことを踏まえると、働けるうちは65歳どころか70でも75でも働いたほうが…という考えも成り立ちます。
しかし、会社員であれば65歳までということを考えると、その後は別のところで雇ってもらうか、企業するかということになります。
ですが65歳からの転身は容易ではないケースもありますので、60歳時点か、あるいは早期退職制度があるならもっと早い段階で転身するということも有力な選択肢になりえます(※2021年4月1日には高年齢者雇用安定法が改正され、企業は希望者が70歳まで働ける環境の整備に努めるよう義務付けられます)。
もちろん、65歳以降は一切仕事をせず、のんびり暮らすというのもいいです。
これからまだまだ続く人生です。
どの道を選択するにしても、まずは定年後のお金に目途をつけることから取り掛かり、生きがい、健康など総合的に考え、高齢期における働き方を自分なりに考えてみることが大切です。
ローン管理について確認する
50歳というと定年まであと10年と考えたとき、「住宅ローン」と「教育費」の負担が残っているかどうかは、退職後のキャッシュフローを考える上で非常に大きなポイントです。
ご相談の場でお客様からよく、「退職までに住宅ローンを完済するため、繰り上げ返済すべき?」と質問をいただきますが、私はケースバイケースだと考えています。
マネー関係の本やネット記事には、繰り上げ返済をすすめるものを目にすることが多いですが、これは金利の高かったひと昔前の常識だと個人的には思っています。
「とりあえず月々の支払いを減らしてしまいたい、早めに払ってしまいたい」と思われるでしょうが、限られた資金で老後の準備をしていく場合、繰り上げ返済にあてるつもりのお金を運用に回すことが、結果的にお金の負担を減らすことになるという見方も知っておいていただきたいです。
アセット・アロケーションとアセット・ロケーション
「アセットなんとか?なんだか難しそう…」と思われるかもしれませんが簡単です。
アセット・アロケーション=どんな資産に預けるのか
アセット・ロケーション=どの制度・商品で運用するのか
というざっくりした感じで捉えてください。
たとえば、お手元の資産(アセット)を「預貯金に預ける、株や債券を購入する、保険で運用、または投資信託、不動産…」と割合も含めて考えることが「アセット・アロケーション」。
そして仮に保険で運用しようと考えた場合、「どの会社のどんな保険に預けようか?」と考えるのが「アセット・ロケーション」。
大人になってから過ごす時間の半分も占める長い老後と今後起こりうるインフレ(物価上昇)を考えた場合、ある程度元本の成長が期待できる資産もバランスよく保有しておくことは必要不可欠といえます。
しかし、退職金や老後に備えて貯蓄した預貯金など、老後生活をまかなう主な手段である原資を、マネープランなしに預けたり、いきなり投資につぎ込んだりするのではなく、まずは老後においてどれくらいの不足が出るのか、そこからおぎなっていく必要のあるある金額を洗い出す、目的を定めることから始めてください。
コミュニケーションと介護問題、自分の居場所
高齢期の不安はお金だけでなく、健康や孤独という問題も生じます。
家族のいる方も単身の方も今後の人生に向けて、自分の活動場所を持ち、家族や友人と適切にコミュニケーションを取りながら過ごすことがよいのではと感じます。
また、ご自身はもちろん、その前に両親の介護の問題もあります。
私のお客様でも、ご自身がリタイアした直後にご両親の介護に直面した方は多くいらっしゃいます。
介護の問題を退職後の生活設計から考える場合、1つは「公的な介護の仕組みをよく理解し、いくら費用がかかるか目途をつけること、できればそれに対する備えをすること」、2つめは「相談できる相手をつくること」が大きなポイントです。
現在も長くお付き合いのある方から、老後における介護やお金、自分の居場所について、たくさんの生の声やご相談をお聞きします。
その経験から、私自身も60歳以降に備えて今から「自分の居場所」と「相談できる場所」を作っておくことは大切だと感じています。
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