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男女の仲が原因で発生する住宅ローンの困ったことを銀行員が解説【前編】

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住宅ローンを組んだパートナー同士が仲違い(※)すると、いろいろ困ったことが起きます。

最近は働き方やライフスタイルも変化し、「女性の社会進出」という言葉さえ不要なくらい、男女の区別なく働ける世の中です。
また女性専用住宅ローンやLGBT対応のローンも登場し、住宅ローンを借りる人やその借り方も多種多様になっています。

しかしそのいっぽう、住宅ローンにまつわる「困りごと」は、昔も今も変わることがありません。

そこで今回は「住宅ローンで男女の仲から発生する問題を銀行員が解説」をテーマに、住宅ローンや自宅不動産をポイントにして、銀行員の私が解説していきます。

(※この記事では、夫婦連帯債務やペアローン、また不動産を共有している場合などのトラブルとその対処法を解説しています。そこでの問題点は、必ずしも法律上の夫婦関係とリンクするものばかりでは無いので、あえて「仲違い」と表現しています。
また表現をシンプルにするため男女、夫・妻といった表現を使っていますが、この部分も異性同性のパートナーとイメージして結構です。)

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男女の仲から発生する住宅ローンの「困ったこと」3選

では早速、起こりうる困ったことをひとつずつ、事例に沿って、全3回で解説していきます。

<男女の仲から発生する住宅ローンの「困ったこと」>
1. 親名義の土地に家を建てた場合【本記事で解説】
2. 不動産を共有した場合【中編で解説】
3. ペアローン、連帯債務でローンを組んだ場合【後編で解説】

親名義の土地に家を建てた場合の「困ったこと」

住宅ローンでは、どちらかの両親などが所有する土地に家を建てるのも良くあるケースです。
土地購入費用がかからない分、住宅ローン借入額が抑えられたり、土地に向ける費用を建物に充てたりできます。

しかしこの場合、夫婦が仲違いした場合は問題が起こってきます。
しかも問題は「どちらの親(祖父母)の土地か?」という点で変わってきます。
● 夫の両親所有地に夫が家を建てた
● 夫の両親所有地に妻が家を建てた
● 妻の両親所有地に夫が家を建てた
● 妻の両親所有地に妻が家を建てた
これが連帯債務も絡んでくると、ケースはさらに複雑になってきます。

まず、夫の両親所有地に夫が家を建てた場合、妻が出ていくなら住宅ローンと不動産名義には影響がありません。(もちろん財産分与といった課題は別に発生しますが)
では夫の両親所有地に妻が家を建てた場合を、私が銀行員として対処したAさん(女性・会社員)のケースで見てみましょう。

夫の親が所有する土地に家を建てたAさん

Aさん(女性・会社員)は夫と共働き、子供2人の4人暮らしです。
子供が大きくなり賃貸も手狭になってきたので自宅新築を夫婦で計画していたところ、夫の父所有地を使って良いということになり、住宅ローンの申し込みに来店されました。
親の土地とはいえ、夫の実家から離れていたので、その点もAさんは嬉しかったようです。

はじめは夫で住宅ローンを組もうと申し込みをしましたが、審査が通りませんでした。
団体信用生命保険に加入できなかった(注1)のと、個人信用情報の異動記録(注2)が原因です。
この当時は夫婦連帯債務やペアローン(こちらは後編で触れます)といったローンは無く対応を検討しました。
幸いAさんで充分ローンを組むことが可能だったので、最終的にローンの借入はAさん、夫が連帯保証人、新築した家はAさん名義となりました。

<注1.団体信用生命保険>
 住宅ローンを借りている本人が死亡や高度障害になると、保険金でローンが完済される仕組みです。
 原則として団体信用生命保険加入ができないと住宅ローンも組めません。)

<注2.個人信用情報の異動記録>
 個人が利用したローンやクレジット、キャッシングなどの履歴は、専門の情報機関に登録されています。
 その記録が個人信用情報(略して個信)です。
 個人信用情報の記録で、支払の延滞や代位弁済(支払不能になり保証会社に肩代わりしてもらった)、自己破産などの
 法的整理は「異動」と呼ばれ、異動があると新しいローンを組むのは非常に難しくなります。
 なおサイト記事では異動を「ブラックリスト」と表現することもありますが、世の中にはブラックリストといったものは 存在しません。

Aさんに起きた「困ったこと」

その後、Aさん夫婦は離婚することになり、夫だけが家を出て行きました。
自宅には愛着があり、住宅ローンもAさん1人でなんとか返済を続けられそうです。
また子供達からも引っ越しはイヤだと言われ、Aさんは今の家に住み続けることを決断しました。
しかし、そう決心したAさんはいくつかの問題と選択を突きつけられたのです。

 <Aさんに起きた問題と選択>
●土地は別れた夫の親名義だが、このままで将来問題はないのか?
●連帯保証人は別れた夫だが、このままでいいのか?

解説1.「使用貸借」
~親族名義の土地に家を建てることと、将来発生する問題~

Aさんのように親族(この場合は夫の親)から土地の提供を受けて家を建てる場合を「使用貸借」と言います。
他人(第三者)から土地を借りて家を建てたなら、地主に対して地代を支払う必要がありますし、
また敷金、保証金などが必要になる場合もあります。
しかし親の土地に子供が家を建てたときなどは、地代や権利金を支払うことは通常あり得ません。
このように地代を払うことなく土地を借りるのが使用貸借です。

使用貸借で将来発生するかも知れない問題は、相続のときに起こることです。
例えば親から自宅の土地を使用貸借している場合、親が死亡すると、の土地を相続するのですが、そこで相続税が発生する場合があります。
また、兄弟などと相続争いが起きた場合「あんただけ土地をもらってずるい」など話し合いが進まなくなり俗に言う「争続」の原因にもなってしまう可能性もあるのです。
対策としては、親に相応の資産があるなら遺言書を作り、使用貸借している土地は自分のものになるよう明記してもらうとか、両親と兄弟など家族会議をして全員が納得する遺産分配をしっかり話し合っておくなど、将来に禍根を残さないようにしておくことが大事です。
【参考出典:国税庁HP/タックスアンサー(よくある税の質問)/贈与税/No.4552 親の土地に子供が家を建てたとき

解説2.「保証人」
~男女の仲は切れても保証人の「絆」は切れない~

住宅ローンや事業資金融資では連帯保証人が融資の保証をすることが良くあります。
連帯保証人とは、債務者(借りている人)と連帯して債務の返済を保証していく人といった意味で、お金を貸した銀行などの債権者は、借りている本人が返済できないときは連帯保証人に返済を求めることができますし、場合によっては本人より先に、連帯保証人に督促することもできます。
債権者から見れば債務者と連帯保証人は同列で、そのため保証人は審査でも重要な項目です。

そして、一度融資の保証人になったら二度と保証人から抜けられないのが通例です。
一般的に保証人から外れることができるのは、保証人本人が死亡したときだけで、したがって離婚しても保証人から抜けられません。離婚と債務の保証は別物だからです。
また死亡したら保証人から外れることはできますが、保証した債務はその相続人が引き継ぐことになり、相続放棄しない限り死んだ親の保証債務を免れることができない点も覚えておいて下さい。

Aさんの選択と迎えた結末

Aさんは、今の家に子供達とそのまま住み続けることを選択しました。
もともと自分1人でローンを組み返済してきたAさんなので、ローン返済自体にはそれほど不安はありませんでした。

残る問題は「別れた夫の親名義の土地」と「別れた夫が保証人」という2つです。
Aさんから相談を受けた私も銀行本社に稟議していくつかの解決案を作りAさんに提案しました。

●【土地~銀行員の解決案】
「1つ目の案は、このまま土地の使用貸借を続ける。それなら現状となにもかわりません。
2つ目の案は、いっそのこと土地を買い取る、というものです。
なぜかというと、将来相続が発生すると別れた夫の親族とのあいだで、トラブルのタネが残るおそれがあるからです。」
●【保証人~銀行員の解決案】
「まず、別れた夫を保証人から外す代わりに、誰か保証人を探すという案があります。
他には、保証人なしも可能な残高になるまで、ローンを一済する方法もあります。(*)」

土地については、別れた夫の親が心情的に「Aさんにすまない」と感じていたそうで、はじめの頃は土地を贈与したいと申し出があったそうです。
しかしAさんは、好意は嬉しいと感じながらも、将来相続のときに「なんで嫁に土地をあげてしまったんだ?納得できない!」など相続争いに巻き込まれないよう、土地は現金で購入することにしました。
土地の買取価格は相場並みで考えていましたが、親御さんから「高すぎる」と、かなり良心的な価格で買うことができました。(*)
Aさんに対する思いやりからの申し出だったので、Aさんもありがたく受けたそうです。
(*土地を、相場より不当に安い価格で購入すると税金が発生する場合もありますが、Aさんのケースでは税理士とも相談して、事前に税金問題も確認していました)

保証人について、やはり別れた夫の父親が保証人になると言ってくれました。
しかしそうなると、今度は相続のときに保証がもめごとになりかねません。
そこで、Aさんは必要なだけローンを一部返済して、保証人なしとする選択をしました。(*)
(*最近では金融庁など監督官庁の方針で「金融機関は融資するときに、過剰な保証人を求めてはいけない」と指導があり、保証人なしでローンを組めるケースも増えています。そのいっぽうで、一度保証人をたてた場合は、そう簡単には外れることができないという点は、今も変わっていません。保証人の交代や解除などは金融機関によっても対応が変わります)

Aさんの選択は
●別れた夫の親から使用貸借している土地は現金で購入した
●別れた夫を保証人から外すために必要なだけローンを返済した
というものでした。

Aさんの選択で必要な金額は1千万円以上とかなりの額でしたが、結婚前から計画的に資産形成してきたので、自己資金で問題を解決できたという事例です。

こうするべきだった ~最初の選択を銀行員が考える~

Aさんの相談を一緒に考えていた銀行員の私は、じつはそのときこんな風に感じていました。
●最初、土地を提供してもらう代わりに、住宅資金を贈与してもらえば良かったのでは?
●保証人も、Aさんの両親など絆が切れない人を保証人にするべきだったのかも?

「だから、あのときこうしておけばよかったのに」とあとから他人が口出しするのは簡単です。
しかしながら、長い銀行員生活で似たようなケースを数え切れないほど見てきた私は、Aさんと同じようにローンを組もうとしているお客様から相談を受けたときは、
「こんなトラブルが起きて、乗り越えたお客様もいたんですよ」とAさんの例を少しだけ引き合いに出して、慎重に考えてもらうようにしています。

「困ったこと」に備える資産形成 長期分散投資

Aさんのケースで私は「自分の将来を考えた資産形成が、困ったときに自分を助けてくれる」ということを知りました。
ただし、最初から気負い過ぎると疲れてしまったり、うまくいかずに焦ってしまったりすることもあるので
「とりあえず自分の老後の足しになるくらいは今から貯めておこう。何かあったときには使えばいいから。」
このくらいの熱量でいいのではないかと、銀行員は思います。
なぜなら資産形成はマラソンと一緒で、最初からフルスロットルでは長続きしませんから。

困ったことに備える資産形成のひとつに「長期分散投資」があります。
Aさんが資産形成のひとつに選んでいたのは長期分散投資の積立型の投資信託です。

積立型の投資信託 ~長期分散投資の代表格~

Aさんは独身時代から、積立型の投資信託で資産形成をしてきました。
投資信託は顧客から預かった資金を、投資の知識や経験が豊富なファンドマネージャーなどの専門家が分析判断し、株式、債権など多様な運用で成果を目指すものです。

また毎月一定額を積み立てていくことで、投資信託の購入価格が高い時は少なく、逆に安い時は多く買うことができます。
こうした繰り返しにより、購入価格も平均して安定してくるのが「ドルコスト平均法(毎月一定額でドル・$を買い続けると、購入単価は平均値に近づく」という考え方で、積立型の投資信託は長期分散投資の代表格と言えます。
私も銀行員として、投資を始めようとしている人には入門編としておすすめしています。

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